17年ぶり最下位の責任を取る形で、今季限りで辞任となった阪神金本知憲監督(50)がラストを飾った。今季最終戦となった13日の中日戦(ナゴヤドーム)を延長11回、中谷将大外野手(25)の勝ち越し打でものにした。志半ばでチームを去る金本監督は「この3年間、目をかけてきた選手の芽が出て、花が咲いてくれないと僕まで悲しくなる。来年以降、きれいな花を咲かせてほしい」と若虎にエールを送った。
黄色く染まった左翼席へ、穏やかな面持ちで歩を進めた。金本監督は帽子を取り、深々と頭を下げた。現役時代のヒッティングマーチが大歓声と交わり、別れの寂しさを際立たせる。「ありがとう」「いつかまた…」。数え切れない応援ボードが悲しげに揺れる中、静かに右手を上げた。柔らかな表情はもう、勝負師のそれではなかった。
「今日も足を絡めたり、そういう野球ができた。最後の最後に良かったです」
就任3年間の最終戦。口を酸っぱくして訴え続けた「執念」を、スタメン平均年齢25・1歳の若虎軍団が体現してくれた。1点を追う9回、大山の盗塁が相手のミスを誘い、土壇場で試合を振り出しに戻す。そして延長11回、右の長距離砲として期待をかけ続けた5番中谷が決勝打。「3年間いろいろ目をかけて、朝練を付き合った選手が来年以降、芽が出て花が咲いてくれないと、僕まで悲しくなる。来年以降きれいな、すごい花を咲かせてほしい」。そう照れくさそうに笑った。
3年間の感情を問われると「いや~しんどかったですね、やっぱり」と苦笑いした。「育成と勝利」の両立を追求し、無名の若手を次々とグラウンドへ送り出した。育てたい。でも勝たなければ…。ジレンマに苦悩した3年目、結果は17年ぶりの最下位だった。日増しに強まる批判の声。それでも3年間、必ず試合後の会見場に現れた。「皆勤賞でしょ?(笑い)。それは仕事だと思っていたし義務ですから」。壮大なチャレンジの結末は「道半ばで」極めて“解任色”が強い形での電撃辞任。最後も指揮官としての職務を全うし、潔く全責任をかぶった。
「全部、僕が環境作りをする能力がなかったからこういう結果になったわけで、選手たちは本当に一生懸命やってくれた。(若い選手は)自信を持ってほしい。どんどん失敗して、チャレンジ精神を持って、前向きに、前のめりになってたくさん失敗してほしい」
とてつもなく重たかった肩の荷を下ろし、最後はウイニングボールを大事にしまった。子を思う親のような笑みを浮かべ、ユニホームを脱いだ。【佐井陽介】
▼阪神は62勝79敗2分け、勝率4割4分の最下位で全日程を終了した。野村克也監督時代の01年80敗以来、17年ぶりの年間80敗はかろうじて免れた。
▼チーム防御率は4・03で、本塁打数は85本。防御率は10年4・05以来の4点台だが、この年は173本塁打の猛打で補い、チームは2位に。防御率4点台で本塁打2桁となると、最下位となった99年以来、19年ぶり。
▼今季の阪神最多本塁打は糸井16本。シーズン20本塁打不在は、13年(最多はマートン19本塁打)以来5年ぶり。
▼勝ち頭は11勝のメッセンジャーだが、日本人最多は岩貞、小野の各7勝。日本人の2桁勝利投手不在は、01年(最多は井川慶、福原忍各9勝)以来、17年ぶりとなった。
▼セ・リーグは公式戦全日程を終え、各球団の観客動員も出そろった。阪神は1試合平均4万831人で、前年の4万2148人からマイナス3・1%。セ6球団で唯一の前年割れとなった。