プロ野球経験者が学生野球指導者になるための「学生野球資格回復制度・学生野球研修会」が15日、都内で行われ、NPB経験者ら137名が受講した。

3日間連続での講習で、この日は2日目。03年ドラフト会議で横浜(現DeNA)に自由獲得枠で指名され入団しながら、わずか3年で戦力外通告を受けた左腕投手・森大輔氏(36)も、地元・石川県から2泊3日で参加している。この日も計6時間の座学研修を終え「想像以上に、学生に対して先を見据えた活動をしていると感じました」と充実の表情を浮かべた。

七尾工(石川=現在は廃校)時代には、3年夏の県大会で23奪三振のノーヒットノーランを記録し「能登のドクターK」と注目を浴びた。卒業後、社会人の三菱ふそう川崎(現在は解散)に進んだが、3年目に左ひじを痛め、やがて「イップスになりました」と苦しんだ。そのまま横浜に入団も、結果は残せず。退団後は独立リーグでも投げたが、11年に引退。現在は地元の一般企業に勤める。

「自分自身、イップスで野球ができなくなることがつらかった」と現役時代を振り返る。150キロの前後の直球があっても、思うように操れないどころか、まともに投げられず「ボールを投げるのが怖くなりました」。

森氏は現役引退から7年を経ての、資格回復受講になる。「少年野球の監督はしたことがありますが、高校野球の指導にも興味があるんです」という。「いつ発症するか分からない」というイップス。「経験者として、学生たちにそのケアをできたらいいなと思っているんです。メンタルトレーニングを学んで、しっかり伝えたい」と夢を持つ。

この日の講義では体罰問題、指導者の役割、危険防止策など多岐にわたることを学生野球関係者から学んだ。「自分はプロで活躍できなかったけれど、野球を始めた子どもが野球をしっかり続けてくれるよう教えて、そうやって野球人口を増やしていくことがプロ野球への恩返しになるかな、と思っています」。かつてアマ球界を席巻した剛速球のイメージとは程遠い、スローカーブのような柔らかな口調で森氏は話していた。