故障者続出のソフトバンクに、またも孝行息子が現れた。ドラフト6位泉圭輔投手(22=金沢星稜大)がオリックス戦の6回無死一、二塁に登板。いきなり先制適時打を許したが、その後は打者6人を抑え、2回無失点の好投。チームは逆転に成功し、プロ初勝利を飾った。球団の新人選手ではドラフト1位甲斐野に続く勝利投手。連日の「若鷹」の活躍で連勝した。

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プロ3試合目のマウンドは、重要な局面で巡ってきた。ドラフト6位の泉が同点で迎えた6回無死一、二塁のピンチで登板。いきなり4番メネセスに左中間へ二塁打を打たれ、1点先制される。「1点取られてから、落ち着いて投げられた」。慌てるどころか緊張が消えた。3人で封じ、同点に追いついた7回も続投。下位打線を3人で片付けた。2回無失点の好投だ。「内川さんが絶対打ってくれると思った」。願いは通じ、その裏に内川が決勝ソロを放った。8回はドラフト1位甲斐野、9回は守護神森とリレーし、泉にプロ初勝利がついた。

最速149キロの直球とフォークやシンカー気味に使い分けるツーシームが武器。大学時代からまねしている武田のように、187センチの長身から、角度ある球を投げる。しかしプロ入り当初は現実を思い知った。ドラフト6位で入団も春季キャンプは、支配下の新人投手5人の中でただひとりB組スタート。金沢星稜大から初のプロ野球選手で、ドラフト1カ月前まで牛丼チェーン「すき家」でアルバイトを続けた普通の大学生だった。球団は体を大きくするためにじっくり育てる方針を打ち立てていた。

テレビの向こうでは、開幕戦で甲斐野が1勝を挙げ、7位の奥村も中継ぎで活躍する姿を見た。「正直、焦るところはあったが空回りせず自分のペースでやれることをしようと思った」と2軍で黙々と実戦を重ねた。1軍は故障者続出だが、ファームはインフルエンザがまん延。1軍候補が続々と倒れる中で「僕は大丈夫でした」と健康を維持をしたことでチャンスをつかんだ。

「僕、めちゃくちゃ巨人ファンなんです」。試合前には東京ドームをウロウロしていた。女性に配布したピンクの「タカガールユニホーム」を見て「あれを着て投げたい」と笑っていた。試合より緊張したというお立ち台に立った時、球場に兄亮輔さん(25)が都内の職場からタクシーを飛ばし駆けつけてくれた。兄の姿を見つけ、がっちり握手した。工藤監督も「すばらしい投球。よく踏ん張ってくれた」と絶賛。21日には周東、三森と打者のニューヒーローが現れたが、この日は泉という「若鷹」が大きく羽ばたいた。【石橋隆雄】

◆泉圭輔(いずみ・けいすけ)1997年(平9)3月2日生まれ、石川県出身。三馬(みんま)小3年の時に三馬クラブで軟式野球を始める。清泉中では軟式野球部。金沢西では1年からベンチ入り。最高成績は県16強。金沢星稜大では1年秋からベンチ入り。趣味は小説を読むこと。好きなタイプの女性は元乃木坂46西野七瀬。187センチ、82キロ。右投げ右打ち。

▼ソフトバンクの新人投手2人が白星を挙げたのは、08年以来11年ぶり。この年は久米勇紀4勝、大場翔太3勝。ともに初勝利は3月だった。

◆新人勝利投手 今季はこの日の泉で4人目。3月29日西武戦の甲斐野(ソフトバンク)4月4日阪神戦の高橋(巨人)同11日阪神戦の大貫(DeNA)が白星を挙げている。