星稜・奥川恭伸投手は1巡目の指名で3度名前を呼ばれても、表情を1つも変えなかった。

記者会見で、ヤクルトがある東京のイメージを聞かれ「自分自身、住んでいるところがすごく田舎なので、都会の生活にも慣れていかないといけないかなと思います」。初めて愛くるしい笑みをこぼした。

星稜から1位指名されるのは27年ぶり。元ヤンキースの松井秀喜氏が巨人に入団して以来だ。「松井さんは自分の先輩でもあり、あこがれの存在。そういう選手になっていけるように、これから頑張っていきます」。同じプロの世界に入り、大きな背中を追う。再び表情を引き締めた。

大船渡・佐々木、東邦・石川、桐蔭学園・森…ともにU18W杯で戦った仲間たちも、次々に1位指名を受けた。なかでも佐々木は、同じ投手として刺激し合ってきた存在だ。「自分も彼に負けないように、頑張って。違う球団にはなるんですけど、切磋琢磨(せっさたくま)してやっていきたい」。プロでも互いに高め合う存在になる。

甲子園をわかせたスターは、自宅でヤクルトを愛飲している縁もあり? 高津新監督が引き当てた。「チームとファンの方が一体となっていて、すごく温かみのあるチームだなという印象がある」。本拠地となる神宮球場は、準優勝した昨年18年の神宮大会で登板。「自分自身、神宮球場で投げた経験もあるので、もう1度あのマウンドに立てるように頑張っていきたい」とイメージもばっちり。4度経験した甲子園でも準優勝が最高。プロの舞台ではヤクルトを優勝に導くエースになる。

節目の日も自然体だった。緊張することなくいつも通り授業を受け、5時間目は体育の授業でソフトボール。もちろん成績は「3打数3安打です」と笑顔。「一番は勝てる投手を目指して、チームのエースになれるような選手になりたい。球界を代表するようなピッチャーになりたい」。北陸から東京へ。未来の大エースがスタートラインに立った。【磯綾乃】