イチロー打法だ。広島松山竜平外野手(34)が、秋季キャンプで新打撃フォーム確立を目指している。大きく上げて踏み出す形からすり足に変更。調子の波を減らし、打撃安定が狙い。日本だけでなく、米大リーグでもレジェンドとなったバットマンの打撃フォームを手本にした。さらに連日の特守で一塁の守備力強化を目指す。自主性に重きを置く秋季キャンプで、攻守に明確なテーマを持って取り組んでいる。

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打撃コーチから直接指導を受けることはない。秋季キャンプ参加選手最年長の松山は自分と向き合い、黙々とバットを振っている。今季まで右足を大きく上げてL字を描くように踏み出していたフォームから、小さくすり足で踏み込む新フォームに取り組んでいる。

今季は開幕から調子を落とし、最後まで安定した打撃ができなかった。「調子を崩したときのズレが大きくなることがあった。安定した形を求めたら、今の形になった」。たどり着いた答えは、天才打者イチロー(元マリナーズ)だった。「イチローさんは今の僕の年齢からさらに10年、プレーしている。とてつもないことだと思うし、それだけの理由があると思う」。無駄のない打撃フォームこそ、最高の見本。タイプは異なるが、参考にして新フォーム確立を目指している。

自主性に任せられる午後も、右翼後方の室内練習場で打ち込む姿が見られる。「僕も新井さんが残って打っている姿を見ている。若い選手が何かを感じてくれれば」。最年長としての自覚は十分だ。高卒1年目で前背番号44を背負う林には、バットの形が似ていることから自分のバットを数本プレゼント。この日はロングティーで思うように飛距離が出ない小園にアドバイスを送った。優しくも厳しい目で後輩たちを見つめている。

打撃とともにレギュラー奪取を目指す一塁の守備力向上も今秋のテーマのひとつ。初日から3日連続で一塁で特守を受け、一足早く打ち上げる14日まで全日参加の予定。「もっとうまくならないと。足が速い選手が外野を守れる(布陣の)方がいいことは分かっている。せっかく来ているのだから、とことんやる覚悟でいる」。若手に混じり、松山も土にまみれる。まだ老け込む年齢ではない。【前原淳】