4番の仕事だ。侍ジャパン打線のど真ん中に座った鈴木誠也外野手(25)が、中盤以降の2打点で白星スタートに貢献した。

5回1死満塁で、一時勝ち越しの中前適時打。8回には波状攻撃に乗り、キッチリ6点目の犠飛を放った。最初の2打席は見逃し三振だったが修正し、持ち前の鋭い打球を飛ばした。屈強な外国勢に張り合う力強いスイングで、打線を引っ張る。

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4番鈴木が台湾の夜空に打ち上げた瞬間、完全に「バモバモッ!」は消え去った。ベネズエラ投手陣の四球連発から1点を勝ち越した直後の8回1死満塁。右腕ソコロビッチのスライダーを左翼後方まで届かせた。「なんとか1点を取れて良かった」。ダメ押しともいえる重たい1点をもぎ取り、試合後は安堵(あんど)した。

ゲーム中盤まで台湾に似合わない「バモス!」という雄たけびが球場に響き渡っていた。チームは4回終了時点で1安打無得点。100人にも満たないであろうベネズエラ発の応援団がスペイン語で「行け!」を連発する中、雰囲気を一変させたのも鈴木だった。同点に追いついた直後の5回1死満塁、一時は勝ち越しとなる中前適時打。4番らしく「バモス封じ」のキーマンとなった。

侍仕様の「刀」が効いた。代表合流直後の10月下旬、宮崎合宿中に吉田正からバットを借りた。感触がバッチリはまり、すぐさまアシックス社の担当者に同じ型を注文。「プレミア12」開幕直前に新たな相棒が届くと、大会初戦でいきなり2打点を決めてみせた。

前日4日は冗談まじりに「“食トレ”の方が大変です」と苦笑いしていた。チーム宿舎の食事会場でも香辛料が効いて「味が独特」だという地元の料理と出合う。「台湾だと思わず、ファミレスだと思って食べています(笑い)」。日本食中心のメニューでなんとか体調を維持。グラウンドに立てば影響を一切感じさせないから、さすがだ。

それでも向上心の塊は納得しない。振り返れば1、2打席目は2打席連続見逃し三振。特に先制を狙った1回は1死二、三塁で三振に倒れており「ボールを見ていく中で自分から攻められなかった」と猛省も忘れなかった。最後は「今日は硬くなってしまっていた。勝ててホッとしています」。もちろん、本領発揮はこれからだ。【佐井陽介】