亡き父、支えてくれた家族へ恩返し-。日本ハムからドラフト5位指名された創価大・望月大希投手(21)が15日、東京・八王子市の創価大で入団交渉を行い、契約金3500万円、年俸770万円(ともに推定)で仮契約を結んだ。

10歳で父を亡くした右腕は、女手ひとつで支えてくれた母と、兄姉との共通の願いだった墓の建立を決意。墓前に勝利球を供えることを誓った。

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仮契約を交わした望月が、胸の奥にある思いを口にした。報道陣に、父勇治さん(享年60)のことを聞かれると「場所とかはまだ決めていないですけど(墓を)建てます。家族全員のお父さんなので(家族と)話し合って決めていきたいと思う」。プロ入りが決まり、墓を建立する決意も固まった。

10歳の時に父を病で亡くした。兄姉とともに、母美雪さん(51)に女手ひとつで育てられた。裕福ではない暮らし。若くして不在となった父の遺骨は、手放すことができず、自宅に置いたままだった。だが、末っ子の自分が巣立つ今こそが、納骨の時期なのかと思えた。普通の21歳ではありえない大金、契約金が手元にある。「(勝利した)姿を見せられたらなと思う」。墓前に、まずはプロ初勝利のウイニングボールを供えたい。

家族は賛成してくれるはずだ。中でも、母に喜んでもらえれば、うれしい。昼夜を問わず、働きづめだったが「(夜も働く姿は)自分が寝ている時間に母がいなかったので気づかなかったです」。学校から帰ってくる時分は必ず在宅で迎えてくれた。「感謝しかない。こうやってプロ野球選手になれたのも自分の力では無理だった。感謝の気持ちを忘れないで、プロに行ってもプレーしていきたい」という。

187センチの長身から振り下ろす、右の本格派。大渕スカウト部長は、似たタイプの投手として石川直を挙げた。「まだ伸びしろは、たくさんあると思っている。特長は角度のある真っすぐとカーブ。できれば先発としていきたいですね」と期待を寄せる。当の望月も、仮契約で決意を新たにした。「夢見ていた場所なので、その舞台に立てることをとてもうれしく思う。成長してチームの日本一に貢献できれば」。夢には、まだ続きがある。【山崎純一】

○…北海道を訪れたことがない望月にとって「未踏の北の大地」は楽しみのようだ。食べてみたいものを問われると「ジンギスカンですね。北海道は有名なので本場のものを食べてみたいです」と笑顔で即答。24日のファンフェスティバル(札幌ドーム)に新入団選手として出席予定で「どのくらい寒いのかなというのはあります」と苦笑いを浮かべていた。

○…望月がタイトル奪取を目標に掲げた。17年に最優秀中継ぎ投手に輝いたソフトバンク岩崎は市船橋の先輩で「(高校の時から)いろいろな話を聞いていた。見習う部分はあったし、憧れです。チームに貢献してタイトルもとれたらいいなと思う」と初々しく意気込んだ。