虎の裕次郎になるぞ! 阪神ドラフト6位の東海大九州・小川一平投手(22)が4日、故郷の神奈川・逗子市にある逗子海岸で自主トレを公開した。子どもの頃よく訪れた場所には、作家・石原慎太郎氏(87)の小説で、弟の石原裕次郎さんがデビューする映画にもなった「太陽の季節」の記念碑がある。「もう1個、建てられるように」とでっかい夢を掲げ、大スター級の活躍を誓った。

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「太陽の季節」の記念碑の前で、小川が右腕を振り下ろすポーズをつくった。すると、分厚い雲の隙間から夕日が現れた。強い日差しは逗子海岸をキラキラと輝かせ、小川も明るく照らした。映画の演出のようなシーンに、小川の夢も大きくふくらんだ。「もう1個、建てられるように、頑張ろうと思います!」。活躍して新たな記念碑を-。新年の故郷ででっかい目標をぶち上げた。

神奈川・逗子市で生まれ育ち、自宅は以前、逗子海岸から徒歩3分の距離にあった。「しょっちゅう来ていました」。幼い頃から海岸沿いを走り、トレーニングしていたという。そんな日常の場所に8歳だった05年、「太陽の季節」の記念碑ができた。石原慎太郎氏が同作で芥川賞を受賞してから50周年を記念して建てられたものだ。

同作は逗子市が舞台。1956年(昭31)に映画化され、大スター石原裕次郎さんが銀幕デビューする作品となった。舞台は違うが、小川も出世街道を歩んで虎の大スターを目指す。「ピッチャーなので、沢村賞を取れたらと思います」。将来、球史に残る活躍で思い出の地に夢の“小川記念碑”を建てられれば最高だ。

182センチから投げ下ろす最速149キロの直球が武器。まずはプロ1年目の活躍を目指す。今年はドラフト指名8選手中5人が高卒選手。「しっかり高校生を引っ張って、一番に1軍で出られるように頑張りたい」。即戦力投手として、1軍のマウンドに一番乗りする意気込みだ。

逗子市とともに、明るくしたい場所がある。大学4年間を過ごした熊本だ。東海大九州1年の時に熊本地震に被災した。「どっちも故郷だと思っているので、熊本市の人にも逗子市の人にも、元気を与えられるような活躍ができるように」。大スター級の活躍で、2つの故郷を太陽のように照らしたい。【磯綾乃】

◆「太陽の季節」 元都知事で作家の石原慎太郎氏が書いた短編小説。1955年(昭30)に文芸雑誌「文学界」7月号に掲載され出世作となった。同年の第1回文学界新人賞を受賞し、56年には第34回芥川賞を受賞。映画化され、弟の石原裕次郎さんも脇役で出演した。戦後世代の若者を描いた作品で、当時は世間に賛否両論を巻き起こし「太陽族」という言葉も生み出した。石原氏は少年時代の一時期を逗子市で過ごしている。

◆逗子市(ずしし)神奈川県にある市で、1950年(昭25)に横須賀市から逗子町が独立し、1954年(昭29)4月15日から逗子市となった。三浦半島の付け根に位置し、鎌倉市、横浜市などと隣接する。総面積は17・28平方キロメートル。人口は5万7125人(18年10月1日現在)。主な出身著名人は元中日の愛甲猛、タレントの石原良純、歌手の辺見マリら。

◆小川一平(おがわ・いっぺい)1997年(平9)6月3日生まれ、神奈川・逗子市出身。逗子小2年で逗子オリーブスで野球を始め、逗子中では軟式野球部。横須賀工では3年夏の県大会2回戦で敗退し、甲子園出場経験なし。東海大九州では2年時に大学選手権出場。182センチ、80キロ。右投げ右打ち。