ソフト界のエースから、野球界のエースへ-。巨人菅野智之投手(30)が18日、ソフトボール日本代表のエース上野由岐子投手(37)から金言を授かった。

福岡県内でソフトバンク千賀滉大投手(26)らが師事する鴻江寿治氏が主宰する「鴻江スポーツアカデミー」の自主トレに参加。上野から08年北京オリンピック(五輪)で金メダルを獲得したメンタリティー、技術とともに「変化」の重要性を説かれ、投球フォーム変更の大きな決断を下した。

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菅野はノーワインドアップから左足を上げる前に、グラブを顔の右側に引き上げ、ボールを投げた。映像を解析しながら、鴻江氏が助言。横では、ソフトボール日本代表の上野が熱視線を送っていた。

菅野 去年、腰の痛みもあって、ああいうシーズンを送ったので何か変えないといけないと思うし、大きく変えるチャンス。

前夜。上野との会話が心に突き刺さった。

「変化を恐れずやってきたから、今の自分がいる」

菅野自身も持ち続ける思いで「変化できなくなったら、スポーツ選手としては終わり」と共感。「すごく勇気のいる決断」と表現した投球フォームの変更に挑戦した。

鴻江氏が提唱する「骨幹理論」では、人間の体は「うで体(猫背タイプ)」か「あし体(反り腰タイプ)」の2種類に分類される。菅野は「うで体」で同氏によれば「腕から動いて、足がついてくる」が理想。体の特徴を生かし、最大のパフォーマンスを引き出す。

ソフト界の大エースからの数々の金言が、身に染み渡った。北京五輪での魂こもった投球が「上野の413球」と称され、金メダル獲得の立役者となった。ボールの大きさは違えど、エースの重圧と闘い続ける孤高の立場は変わらない。「内容は秘密」と伏せたが、胸のつかえが消えた。

菅野 なかなか自分の心境とか、理解されない苦しさというのもありましたけど、立ち居振る舞いから試合への持っていき方、試合中での技術面を含め、すごく参考になる部分があった。何かすごく心の支えになるような気がします。

上野の言葉も充実した時間を物語った。「菅野選手はすごく悩んでいる感じで、戸惑いを感じていた。トップの追われる立場、地位を守るというか、背負った者にしかわからない感情、感覚的な話ができて良かった」。新フォームで東京五輪金メダルへ。レジェンドの言葉で目指す道が見えた。【久保賢吾】

◆上野の北京五輪3連投VTR 08年8月20日、準決勝の米国戦は1-4で敗れたが、延長9回147球で8三振の熱投。直後の3位決定戦オーストラリア戦も延長12回、7奪三振、171球で勝利に貢献した。合計21回318球を投じた翌21日の決勝は米国と再び対戦。7回を4奪三振、91球(公式記録は申告敬遠の4球を含む95球)で1失点完投。上野は2日間で28回409球(同413球)を投げ抜き、チームを金メダルに導いた。08年の「新語・流行語大賞」で「上野の413球」は審査員特別賞に選ばれた。