1年前の2019年5月29日、阪神高山俊外野手が劇的な一発を放った。巨人戦の12回1死満塁で代打登場しサヨナラ満塁本塁打。伝統の一戦でのサヨナラ満塁弾は3本目だが、代打では初めての快挙となった。

【復刻記事】

阪神が劇的グランドスラムで2位に浮上した。延長12回1死満塁で高山俊外野手(26)が、右翼ポール際に今季1号の代打満塁サヨナラ本塁打を放った。阪神-巨人の伝統の一戦では史上初となる劇弾は、甲子園での巨人戦10連敗という球団ワースト記録を阻止する大きな1発になった。

甲子園の夜空に白球が舞った。代打満塁サヨナラ本塁打。ヒーローは高山だ。ベースを1周するとナインに歓喜のシャワー浴びせられ、本塁で尻もちをついて苦笑い。「いや~もう、自分が打ったかよく分からない。テレビで見ている感じで自分じゃないようだった…」。駆け寄ってきた矢野監督を見つけると熱く抱擁。水浸しになった指揮官の背中には、泥だらけになった高山の手形がくっきりと残った。

無我夢中だった。4-4で迎えた延長12回1死満塁。植田に代わって打席に立った。「(植田)海にも頑張ってくださいと言われたのでそういう気持ちで打った」。2ボールからの3球目。押し出し四球が頭をちらつくカウントでも迷いはなかった。高めの変化球を鋭いスイングで振り抜いた。大歓声に押された打球は右翼ポール際に飛び込んだ。高山が「(人生で)たぶん初めて」というサヨナラ弾。サヨナラ満塁弾となれば、阪神では96年グレン以来。巨人戦では初のミラクルだ。

午後10時30分に決着がついたロングゲームだったが、高山の1日は早朝から始まっていた。ウエスタン・リーグのオリックス戦(鳴尾浜)に志願出場。「結果も出なくて打席にも立ちたかった」。ルーキー近本、木浪らの台頭でこの試合まで出場20試合とチャンスも激減。必死にもがいていた。今季から気分を一新し打撃手袋、エルボーガードなどを金色に変更。3年前の新人王が、がむしゃらに野球に向き合っていた。

筋書きのないドラマでチームは巨人を追い抜き、2位に浮上した。定着しつつある「矢野ガッツ」を連発した矢野監督も「俊もなかなか先発で出られなくて。本当に悔しい思いをしている選手。ベンチでもすごく声を出してくれて。エリート選手がいまベンチにいるのはすごくつらいと思う。心の成長をいつも感じていた」と大感動だ。昨年7月から続いていた球団ワーストタイとなる甲子園の巨人戦連敗も9でストップ。貯金は今季最多の5とした。猛虎の進撃が止まりそうにない。

▼阪神高山が17年鵜久森(ヤクルト)以来、プロ野球17人目(セ・リーグ11人目)の代打満塁サヨナラ本塁打。阪神では96年グレン以来、23年ぶり4人目。延長12回以降は98年広永(オリックス)以来3人目。セの延長制限が12回になった01年以降、12回に打ったのは初めて。このカードでの満塁サヨナラ本塁打は60年王(巨人=投手村山)76年末次(同=投手山本和)に次いで3本目だが、代打では高山が初めてだ。

※記録、表記などは当時のもの