「キレダス」開発藤田剛士氏の挑戦と野球人生に迫る

  • キレダスとキレダスアスリート(下)

投手が口にするボールの「キレ」。分かるようで分かりにくい究極のテーマに挑戦する男たちがいる。発売から約3カ月で入荷1万本を超え、野球界に新たな風を吹き込む、投げるだけで格段にキレがアップするギア「キレダス」。開発者の1人、藤田剛士氏(37)の挑戦と野球人生を追った。

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3年前、藤田は現役生活にピリオドを打ち、子どもたちへの指導に重きを置き始めた。

富山国際大卒業後、社会人野球のTDKで3年間プレー。プロ入りの夢はかなわずも、クラブチームの富山ベースボールクラブ、軟式野球チームで現役にこだわった男は次なるステージに野球界への恩返しを選んだ。

「小学1年生の時から、ずっと野球をやってきましたから。何か恩返しというか、自分が貢献できることはないかなと思った」

希望にあふれ、足を踏み入れた指導の世界で戸惑いとギャップに苦しんだ。「ボールを前で離す」「肘を上げる」。言葉で伝えても、少年少女にはうまく伝わらない。感覚を言葉で伝えるのは難しく「目で見えて、分かる道具はないか」と思考を巡らせ、紙飛行機をヒントに「キレダス」の開発へと発展した。

昔から、機械などを分解するのが好きだった。故障すれば、工具を手に持ち「どんな仕組みになってるんだろうか」と中身を分解。「何でも自分でやるのが好きだった」と追求した。実家では、伝統工芸品で有名な高岡銅器などで花瓶作りに没頭。モノ作りが身近な中で生まれ育った。

「キレ」との出会いは、富山・高岡向陵高時代にさかのぼる。当時、敦賀気比(福井)の内海哲也(西武)、七尾工(石川)の森大輔(元横浜)、加賀(石川)の田中良平(元ロッテ)の「北陸3羽がらす」が注目された。森とは対戦し「低めの球が見えなかった。ボールかなと思ったら、ストライク。伸びてくるような感覚」と衝撃を受けた。

当初の「藤田棒」から、TDKの先輩で製作者の1人、津口竜一(41)のひらめきで命名された「キレダス」。購入者から変化の声を聞くたびに、喜びに包まれる。「やっぱり野球が好きなんで」。1つ1つに魂を込め、子どもたちが野球界で羽ばたくことを願っている。(本文敬称略)【久保賢吾】

○…キレダスは使ったその日から感覚の変化を感じる人も多く、購入者からはテクニカルピッチ(SSK社)による計測で球速アップや回転数の増加など、目に見える変化の声が寄せられる。藤田氏によれば、正しいフォームでなければキレダスを地面にたたきつけるケースなどがみられ、15メートルほど投げられるようになれば、フォームにも変化が表れるという。津口氏は「自分のポテンシャルを引き出してくれる。投げる感覚をつかんでほしい」と話した。

◆問い合わせ キレダスノーマルは3850円、キレダスアスリートは5500円(ともに税込み)で販売。問い合わせは、キレダス公式ホームページ(https://backstage-baseball.com/kiredas/)まで。

◆藤田剛士(ふじた・たけし)1982年(昭57)6月29日生まれ、富山県高岡市出身。小学1年で国吉北斗ジュニアーズで野球を始め、5年から投手一筋で6年時に全国大会出場。中学でも高岡シニアで全国大会に出場した。高岡向陵高ではプロからも注目されたが、甲子園出場はなく、最高成績は3年夏の県8強。富山国際大に進学し、1年春から登板。ベストナインに2度選出され、4年時には大学日本代表の選考合宿に参加した。社会人野球のTDKに入社し、06年の都市対抗では優勝に貢献。退社後は富山ベースボールクラブ、軟式野球チームでプレーした。