巨人原辰徳監督(61)が、恩師の長嶋茂雄終身名誉監督(84)に並ぶ、監督通算1034勝目をつかんだ。ヘッドコーチだった01年秋に長嶋監督の後任として監督就任。14年目で球団歴代2位タイの勝利を積み上げた。節目の一戦は1番に今季初めて重信を配して打線を活性化させ、背番号「8」の後継者丸が2本塁打を含む6打点と爆発。首位をがっちりキープし、巨人歴代1位の川上哲治氏の1066勝に32勝と迫った。

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ミスターが4打席4三振でプロデビューした58年に産声を上げた原監督が、ゆっくりベンチから歩み出た。恩師に並ぶ、記念のウイニングボールを受け取る。「1年1年の積み重ね。1勝、2勝…と。長くやろうとか、何勝とかではなく、その1年に勝つ。その積み重ね」。まだシーズン半ば。個人の記録より、次の1勝に神経を研ぎ澄ませた。

ヘッドコーチだった01年秋、東京ドームの監督室で直立不動で待ち構えていた長嶋監督に右手を差し出された。直接監督就任を伝えられてから、通算14年目で1034勝に到達。恩師は「攻めるところは徹底的に攻めて、守るところは守る姿勢」と原采配のストロングポイントを評した。

ミスターの言葉通り、節目の一戦でも変化は恐れない。1番には今季初めて重信を起用。1回に右前打で出塁すると「攻めの姿勢」で二盗を決め、丸の先制3ランにつなげた。連覇を目指すキャンプ前、6~7人のレギュラー固定を理想に掲げた。だが開幕直前の練習試合で状態を見極めると、迷わず前言撤回。課題の1番は重信が今季6人目。相手投手に合わせて14試合で14通りの打線を組んで、チームを動かしてきた。

ベンチでは攻撃時は立ち上がり、守備の時は精神を沈めるように腰を下ろす。「ミスターもそうだったんだ」。試合中、時折ユニホームのポケットからメモ帳を取り出してペンを握る。「カッとしている時に100%思っていることを言ってしまうと、言わなきゃ良かったという時がある。書く時は絶対に下を向く。こうべを垂れる。謙虚になるんだな」

心を整え、長嶋監督の後を継ぐ重圧を乗り越え、球団歴代2位タイまで白星を積み上げた。「一足飛びに語ることはできない。平たんな道でなかったということは言わせていただけるかな」。3月上旬の遠征時、外出自粛期間には首脳陣やスタッフで「すべらない話」を開催。松本人志役の指揮官が司会者を務め、食事会場は笑いに包まれた。リーグ10勝一番乗りは4年ぶり。ミスター直伝の「陽」の精神も受け継ぎ、厳しい戦いに挑んでいく。【前田祐輔】