今年から日刊スポーツ評論家に就任した広島前監督の緒方孝市氏(51)がライブ評論で注目プレーを解説。広島は中盤に追い上げられながらも、相手リリーフ陣を攻略し、再び突き放した。広島が3連戦の初戦を勝ち、4位阪神に1ゲーム差に迫った。緒方氏が勝敗の鍵を語った。


スコア詳細



チーム
阪 神
広 島11

【神】●青柳、能見、小川、伊藤和、望月

【広】○森下、高橋樹、島内、一岡、D・ジョンソン

【本】松山3号3ラン(2回青柳110m)


試合後

【緒方孝市氏の評論】

「阪神は追い上げた直後の失点が痛かった。5回に3番手小川が2失点、6回には伊藤和が3失点。この試合のように、先発が3回で降板した状況で、中継ぎが踏ん張れば、また上がっていける。勝ちパターンで勝ちにもっていくのは当たり前のこと。ビハインドの展開で投げるからといって、点を取られていいわけではない。酷な言い方かもしれないが、小川は新人とはいえ、14試合目の登板だ。球の力は魅力だが、結果を出さないとベンチの信頼を失う。優勝を狙うには、そこの整備も必要だ。 広島は佐々岡監督の打線改造が的中した。特に2番羽月はラッキーボーイ的な存在になった。松山も4番で結果を残した。鈴木誠を休ませた試合で勝ったのは大きい。森下が投げた試合では、打線の援護がなかったという点でも、価値ある勝利だった」

お立ち台でインタビューに答える羽月隆太郎(左)と松山竜平(現場代表)
お立ち台でインタビューに答える羽月隆太郎(左)と松山竜平(現場代表)
プロ野球広島対阪神6回戦 羽月隆太郎(右)を迎える佐々岡監督(撮影・加藤孝規)
プロ野球広島対阪神6回戦 羽月隆太郎(右)を迎える佐々岡監督(撮影・加藤孝規)
広島対阪神 9回表阪神2死一塁、中飛に倒れ試合終了、ベンチに引き揚げる大山(撮影・上田博志)
広島対阪神 9回表阪神2死一塁、中飛に倒れ試合終了、ベンチに引き揚げる大山(撮影・上田博志)

試合経過


<1回>

阪神 2番福留の二飛をプロ初スタメンの広島羽月が捕球。3者凡退。

広島 西川が四球。羽月のプロ初打席は犠打。1死二塁。4番松山が先制の中前適時打!広1-0神続く坂倉が二塁打で2死二、三塁。ピレラのショートへの内野安打で2点目!広2-0神


【緒方孝市氏の評論】

初回を3者凡退に抑えた広島のルーキー森下の投球を解説。

「前回の巨人戦で、森下は5回で100球を投じた。彼は直球の平均球速がリーグでトップクラス。右打者へのウイニングショットは、カットボールではなく、内角へのストレートだ。そこが決めきれずに、四球で歩かせるケースが見られた。それが5回100球という球数につながった。 巨人戦を踏まえて、この試合では大胆にストライク先行の投球を心がけるのではないか。初回のサンズとの対決でそこがうかがえた。1ストライクの後、2球続けてストレートで内角を攻めた。3球目でカウント1-2で追い込めたことで、優位になった。最後は外角へのカットボールで三ゴロ。このように内角に決まれば、いい投球ができるだろう」


広島先発森下暢仁(撮影・上田博志)
広島先発森下暢仁(撮影・上田博志)

初回に好調の阪神青柳から先制点を挙げた広島打線の策を解説。

「広島の首脳陣は思いきったオーダーを組んだ。比較的、同じメンバーで打線を組んでいたが、2番に足の速い羽月を起用。鈴木誠を休ませたのは、連戦による休養と青柳対策の意味合いがあるのだろう。打線の印象は、打つだけでなく、機動力を絡めた攻撃ができる。先の戦いを見据えて、機動力という面でもメドを立てておきたい思惑があるのではないか。 今年の青柳は右打者も左打者も苦にしない。しっかりと低めにコントロールされているので、勝てている。打者は低めの球を強引に引っ張ると、ゴロになる。広島打線は膝から下のボールは振りにいかないという策で臨んでいる。 初回、広島の1番西川は、低めの球にピクリともしなかった。低めの球を徹底して捨てる意識で打席に入っている。結果、四球を選んだ。得点圏から、3番堂林はバントの構えで2度揺さぶりをかけた。打ちにいきたいところだが、チームとして球数を投げさせる意図を感じる。2死二塁で、4番松山は2球目、インローの球を詰まりながらもセンター前に運んだ。先ほども言ったように、強引に打てば、凡打になる。左バッターはセンターから逆方向に打つ意識をもてば、ヒットになる確率は上がる。松山は得点圏では積極的に振りにいくタイプだ。初の4番ということで気合も入っている」



1回裏広島2死二塁、中前へ先制適時打を放つ松山竜平(撮影・清水貴仁)
1回裏広島2死二塁、中前へ先制適時打を放つ松山竜平(撮影・清水貴仁)
広島対阪神 1回裏広島無死一塁、送りバントを決める羽月隆太郎(撮影・上田博志)=2020年8月7日、マツダスタジアム
広島対阪神 1回裏広島無死一塁、送りバントを決める羽月隆太郎(撮影・上田博志)=2020年8月7日、マツダスタジアム

<2回>

阪神 ボーアが四球、梅野が右前打で1死一、二塁。木浪のセンターに抜けそうな打球を広島羽月がダイビングキャッチ。二直となりダブルプレー。

広島 野間が左前打、西川が左前で1死一、三塁。羽月が絶妙なセーフティースクイズでプロ初安打初打点!広3-0神 松山が3号3ランで追加点!広6-0神

◆広島松山のコメント「前の打席と同じようにボールの内側をうまく打つことができました」

2回裏広島1死一、三塁、一塁線へのバントで適時内野安打としプロ初安打を記録する羽月隆太郎(撮影・清水貴仁
2回裏広島1死一、三塁、一塁線へのバントで適時内野安打としプロ初安打を記録する羽月隆太郎(撮影・清水貴仁
広島対阪神 2回裏広島2死一、二塁、右越え3点本塁打を放つ松山竜平(撮影・清水貴仁)=2020年8月7日、マツダスタジアム
広島対阪神 2回裏広島2死一、二塁、右越え3点本塁打を放つ松山竜平(撮影・清水貴仁)=2020年8月7日、マツダスタジアム

<3回>

阪神 植田が失策で出塁。青柳の犠打で2死二塁。近本の中前適時打で反撃!広6-1神

広島 2死から投手森下が右前へプロ初ヒット。青柳の暴投で2死二塁。西川が内野安打で2死一、三塁。羽月が遊ゴロで無得点。

3回表阪神1死二塁、中前に適時打を放つ近本光司(撮影・上田博志)
3回表阪神1死二塁、中前に適時打を放つ近本光司(撮影・上田博志)

<4回>

阪神 3番サンズから始まるも3者凡退

広島 (阪神は2番手能見を投入)松山がこの日3安打目となる右前打も、後続が倒れ無得点。


【緒方孝市氏の評論】

阪神は3回に1点を返したが、4回は3番サンズ、4番大山、5番ボーアが元気なく3者凡退。森下対阪神打線を解説した。

「阪神打線はシーズン前や公式戦でも森下と対戦しており、球筋は見ている。それでもこの試合の森下は、ストレートの精度がよく、両サイドに決まっている。カーブの抜けが良く、カウントを稼げるのも大きい。ストレートが少々、甘くなっても、緩急を使えているので、打者は押し込まれる。スライダーも低めに決まり、この投球では、なかなか打者はとらえるのは難しい。4回の阪神の攻撃を見ても、明らかに投手有利のカウントで投げられている。森下のペースだ。こういう時は、ストレートをしっかりと振っていくイメージをもって、打席に入らないといけない。強く振ることで、投手も意識する。そうしなければ、ポンポンとストライクをとらえ、相手のペースにハマってしまう」


<5回>

阪神 木浪が中前打、植田が右前打で1死一、二塁。代打中谷の左前適時打で1点返す!広6-2神 続く近本が適時二塁打!4連打!!さらに福留の二ゴロの間に4点目!広6-4神

広島 (阪神は3番手小川)1死から野間が中前打。森下が犠打、西川が敬遠で2死一、二塁。羽月が2点適時三塁打で突き放す!広8-4神


【緒方孝市氏の評論】

阪神は5回に森下を攻略。7番木浪からの4連打などで3得点。2点差に迫った。流れを変えた矢野采配を解説した。

「5回は下位打線からの流れで3点を取ったのは大きい。森下は決して単調になったわけではなかったが、木浪ら打者も2、3巡目の対戦で球種のイメージはあったのだろう。当たりが悪くても、打球が外野にまで抜けた。一方で森下はそれまでの大胆さが影を潜め、慎重になって、ストライクゾーンをボール1つ外れる球が増えた。阪神は代打中谷のタイムリーなど前日の巨人戦に勝った勢いが消えていなかった。 矢野監督の采配として、1つ挙げたいのは青柳を3回でスパッと替えた点だ。もう1イニング投げさせる選択肢もあったが、青柳は球数も多く、流れが悪かった。守りの時間も長くなることで、攻撃にも影響を与える。流れを変えるという意味でも、この交代はアリだ。勝敗につながるかは分からないが、5回の得点につながる采配だった」

5回表阪神1死一、二塁、左前へ適時打を放つ中谷将大(撮影・清水貴仁)
5回表阪神1死一、二塁、左前へ適時打を放つ中谷将大(撮影・清水貴仁)
5回表阪神1死一、二塁、左翼線へ適時二塁打を放つ近本光司(撮影・清水貴仁)
5回表阪神1死一、二塁、左翼線へ適時二塁打を放つ近本光司(撮影・清水貴仁)

2点差に迫られた広島は5回裏にプロ初スタメンの2番羽月が右中間への適時三塁打でリードを再び広げた。この場面を解説した。  

「5回裏2死一、二塁で、阪神は前進守備のシフトを敷いた。まだ5回ということで、ここまで大胆にするイニングではないが、2軍での羽月のデータも入手しているだろう。追い上げた後で1点もやりたくないという状況もあり、割り切ったシフトになった。通常なら右飛だが、羽月もよくあそこまで飛ばした。2回もセーフティースクイズを決め、ラッキーボーイ的な存在になった。安部が結果を残せずに出場選手登録を抹消。鈴木誠や菊池涼らレギュラーが休養を取った中で、若手が活躍すれば、チームも勢いづく。流れを再び引き寄せる得点になった」

広島対阪神 5回裏広島2死一、二塁、右中間を破る2点適時三塁打を放つ羽月(撮影・清水貴仁)
広島対阪神 5回裏広島2死一、二塁、右中間を破る2点適時三塁打を放つ羽月(撮影・清水貴仁)
5回裏広島2死一、二塁、羽月隆太郎の打球にグラブをのばすも捕れず2点適時三塁打を許す福留孝介(撮影・上田博志)
5回裏広島2死一、二塁、羽月隆太郎の打球にグラブをのばすも捕れず2点適時三塁打を許す福留孝介(撮影・上田博志)
5回裏広島2死一、二塁、右中間へ2点適時三塁打を放った羽月隆太郎(撮影・上田博志)
5回裏広島2死一、二塁、右中間へ2点適時三塁打を放った羽月隆太郎(撮影・上田博志)

<6回>

阪神 梅野、植田が四球で2死一、二塁の好機で、代打糸井が左飛で得点ならず。

広島(阪神は4番手伊藤和がマウンド)坂倉、ピレラ、田中広の3者連続四球で1死満塁。野間が三振。代打長野が2点適時打!広10-4神 続く代打大盛も中前適時打で追加点!広11-4神

◆広島長野のコメント「思い切っていきました。ランナーをかえすことができて良かったです」

プロ野球広島対阪神6回戦 6回裏広島2死満塁、代打の長野は中前2点適時打を放つ(撮影・加藤孝規)
プロ野球広島対阪神6回戦 6回裏広島2死満塁、代打の長野は中前2点適時打を放つ(撮影・加藤孝規)
プロ野球広島対阪神6回戦 6回裏広島2死満塁、代打の長野は中前2点適時打を放つ(撮影・加藤孝規)
プロ野球広島対阪神6回戦 6回裏広島2死満塁、代打の長野は中前2点適時打を放つ(撮影・加藤孝規)
6回、追加点を許し渋い表情を見せる伊藤和雄(撮影・上田博志)
6回、追加点を許し渋い表情を見せる伊藤和雄(撮影・上田博志)

<7回>

阪神 (広島は2番手高橋樹を投入)近本、福留の連打で無死一、二塁。サンズも続き左前適時打で5点目!広11-5神 大山の併殺後、ボーアが四球で2死一、三塁。広島捕手坂倉の捕逸で追加点!広11-6神(広島は3番手島内がマウンドへ)梅野は空振り三振。

広島 3者凡退

2020年8月7日 左前適時打を放つジェリー・サンズ(撮影・清水貴仁)
2020年8月7日 左前適時打を放つジェリー・サンズ(撮影・清水貴仁)

<8回>

阪神(広島の4番手は一岡)3者凡退

広島 (阪神の5番手は望月)3者凡退


<9回>

阪神(広島の5番手はD・ジョンソン)先頭の近本がこの日4安打目となる中前打で出塁も、後続が倒れ試合終了。

広島対阪神 9回表阪神2死二塁、広島ベンチに飛び込んだ大山悠輔の邪飛が中村奨成(左奥)の背中に当たる(撮影・清水貴仁)=2020年8月7日、マツダスタジアム
広島対阪神 9回表阪神2死二塁、広島ベンチに飛び込んだ大山悠輔の邪飛が中村奨成(左奥)の背中に当たる(撮影・清水貴仁)=2020年8月7日、マツダスタジアム

スタメン

【阪神】

(中)近本

(右)福留

(左)サンズ

(三)大山

(一)ボーア

(捕)梅野

(遊)木浪

(二)植田

(投)青柳


【広島】

(中)西川

(二)羽月

(三)堂林

(一)松山

(捕)坂倉

(左)ピレラ

(遊)田中広

(右)野間

(投)森下


試合前

試合前の練習で天に向けボールを投げる森下暢仁(撮影・清水貴仁)
試合前の練習で天に向けボールを投げる森下暢仁(撮影・清水貴仁)
キャッチボールを行う青柳晃洋(撮影・清水貴仁)
キャッチボールを行う青柳晃洋(撮影・清水貴仁)
試合前、ベンチ前に整列する羽月隆太郎(左)、鈴木誠也(撮影・清水貴仁)
試合前、ベンチ前に整列する羽月隆太郎(左)、鈴木誠也(撮影・清水貴仁)