コロナ禍で変則日程で戦う今季のプロ野球は、涙が印象的だ。

7月16日の楽天対西武戦(楽天生命パーク)。打球直撃の影響で降板を余儀なくされた楽天の先発弓削は、ベンチへ引き揚げてもタオルで涙を拭い続けた。

8月19日の巨人対阪神戦(東京ドーム)。負傷降板となった巨人の先発メルセデスはベンチで泣き、決断を下した宮本投手チーフコーチも泣いた。

8月27日の西武対日本ハム戦(メットライフドーム)。西武森が涙した。リードしている終盤に途中出場して一時逆転を許したが、山川のサヨナラ打で救われ、感情が爆発した。

9月3日の中日対広島戦(ナゴヤドーム)。プロ初完投を逃した中日福谷は、降板時に涙があふれた。

9月12日のソフトバンク対西武戦(ペイペイドーム)。1試合で2失策したソフトバンク周東は試合中にベンチで目を潤ませた。

ここまでで共通しているのは、悔し涙だ。もちろん、うれし涙もあった。8月28日の広島対阪神戦(マツダスタジアム)では、サヨナラ打を放った広島上本が男泣き。9月2日のロッテ対西武戦(ZOZOマリン)では、復活勝利を挙げた西武内海がヒーローインタビューで目を潤ませた。

さらに、シーズン途中で引き際を決めた阪神藤川、楽天渡辺直の、さまざまな感情が入り交じった、特別な涙もあった。

野球ができることが幸せだと感じる、特別なシーズン。人生観すら変わりそうな、さまざまな不安と闘いながら、プロ野球選手も日々を過ごす。感情が揺れ動く姿は、見ている側も心が揺さぶられる。

担当する日本ハムでも、涙を見た。

7月14日ロッテ戦(札幌ドーム)。2度の送球ミスで途中交代となった清水は、ベンチで悔しさをこらえ切れなかった。

7月28日オリックス戦(札幌ドーム)。左膝骨折の大ケガから復活勝利を挙げた上沢は目頭を熱くした。

そして、9月16日ソフトバンク戦(札幌ドーム)。失点につながる失策をした平沼が、敗戦後のベンチでタオルを頭からかぶり、涙を流した。

うれし涙も悔し涙も、全力を注いだ中で、あふれ出る熱い思いに変わりはない。ただ、悔し涙を糧に成長できるかは、自分次第でもある。

過去に栗山監督も目を真っ赤に腫らす姿を見たことがあるが、すべて選手の必死な姿を見て心打たれたものだった。「感動は推進力」と指揮官は言う。涙が白星につながるわけではない。ただ、現状の日本ハムが大逆転で頂点を目指すには、人の心を揺さぶるような、熱くて強い気持ちを体現していくことが、必要だ。【木下大輔】