阪神藤浪晋太郎投手(26)は「驚きしかなかった」と偽らざる胸中を明かした。プロ9年目で初の開幕投手が決定。本人からすれば、青天のへきれきだった。

「まったくと言っていいほど頭になかったので。ただただ驚いたというのが1番。落ち着いていない状況です」

昨季は復調を印象づけたとはいえ1勝どまり。今春は3年ぶりの開幕ローテ入りを争う立場からスタートしていた。大黒柱の西勇も、昨季11勝の秋山も、2年連続規定投球回クリアの青柳もいる中での大役抜てきだ。

「チームの顔だと思いますし、もちろん責任もある。期待している、評価しているという話もいただいた。結果で示したい」

表情が引き締まるのは当然だった。

甲子園残留練習に参加した7日、博多遠征中の矢野監督からLINEで通達された。この日の練習中には直接、意図も説明された。

「大山がキャプテンをやったり、近本が選手会長をやったり、オマエたちの世代で強いタイガースになっていってほしい」

指揮官から同学年の2人の名前も挙げられ、覚悟は決まった。

矢野監督は「エースは西(勇)」と強調した上で「日本一になるためにはプラスアルファが絶対に必要。また強いタイガースを作るという意味も含めて、開幕投手にあいつを指名した」と熱弁。右腕に思いが伝わっていないはずがない。

ワインドアップに再挑戦中の今春は実戦計4試合12イニングで1失点。制球の精度、安定感は明らかに向上しており、「今のところはフォーム、技術的なところは順調に来ている」と納得の調整が続いている。

開幕戦は26日の敵地ヤクルト戦。ツバメ打線は昨季防御率1・48と抑え込んでおり、神宮は昨年8月21日に692日ぶりの白星を手にした舞台でもある。

「やっぱりチームに勢いがつくような投球をしたい。もちろん苦しい場面もあると思いますけど、なんとか粘ってチームの勝利につなげられたらと思います」

21年、「藤浪世代」が新たな未来を切り開く。【佐井陽介】