日本ハムの元気印が硬軟自在の活躍で、新型コロナ禍から再出発したチームを引っ張った。

杉谷拳士内野手(30)が7日楽天戦(札幌ドーム)で、今季初安打となる先制弾に追加点のスクイズと大暴れだ。4月30日に1軍に再昇格し、1日西武戦では最終打席で1度もバットを振らず押し出しのサヨナラ四球を選んでヒーローになった。この日はバットを振って、転がして、2年ぶりに苦手の楽天涌井を攻略した。

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新型コロナ禍に見舞われたチームの再出発に、球界屈指の元気印がチームを勇気づけた。「ピンチになったら~助けに来るよ~。あいつが~うわさの、うわさの、うわさのスギノール♪」。オリジナル登場曲の歌詞のごとく、杉谷が先制弾を右翼席へ運んだ。

3回2死で迎えた第1打席、楽天涌井の真ん中に入ったシンカーにバットを合わせた。打球は札幌ドームの右翼席ぎりぎりに飛び込む先制弾。今季17打席目でようやく飛び出した初安打が、まさかの今季1号。2-1の5回には鮮やかにスクイズも決め、貴重な追加点を奪った。

1軍再昇格した4月30日西武戦(札幌ドーム)では、9回に1度もバットを振らずにサヨナラの押し出し四球を選んでヒーローになったばかり。活動休止期間を経て2戦連続のヒーローインタビューでは「今日はコンちゃん(近藤)から『バットを振っていいです』と言われたので」と、ドヤ顔。「打率がないのに1番で使ってくれたので、結果で応えたかった」と、しみじみ話した。

新型コロナウイルスのクラスター発生で特例2021対象として10選手を欠く中、チームは6日ぶりの公式戦。杉谷をはじめ、スタメンには4人の“お助けマン”こと代替指名選手が並んだ。練習中もフリー打撃以外はマスクを着用し、試合前の君が代斉唱でもベンチでは全員マスク姿と感染対策を徹底した。

「『本当に野球やるのか』とか、いろいろなメッセージが来たけど、今、こうして野球ができている。僕は1試合を乗り切るために、アグレッシブに戦うことだけを心掛けた」。死に物狂いで臨んだ復帰戦。帝京高(東京)の大先輩で、お笑いコンビ「とんねるず」の石橋貴明が作ってくれた登場曲のような活躍で、ファンに白星を届けた。栗山監督は「スーパー・ウエポンはさすがですね。大変な時、苦しい時、どんな状況でも一生懸命やってくれる。そういう思いが、こういう結果につながっていくんだなと感じた」と、感無量だ。最高のリスタートで、暗い話題を吹き飛ばした。【中島宙恵】

▽日本ハム万波(6回の中前適時打で、3年目で初打点) 涌井さんはプロに入ってから一番対戦したい先輩だった。何より札幌で打てたのが本当にうれしい。