母への思いがこもった“ピンクバット”が、主砲を目覚めさせた。楽天浅村栄斗内野手(30)が母の日の9日、33試合、140打席ぶりの1発となる2号2ランを放ち、チームの連敗を3で止めた。2点リードの6回に日本ハム・アーリンから左中間席へ放り込んだ。母の日にちなみ、練習からピンク色のバット、スパイク、リストバンドを使用。いよいよ昨季の本塁打王に、真っ赤な火がついた。

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鮮やかなパッションピンクに染まるバットを、ド派手に振り抜いた。6回2死一塁。手足を同色に染める浅村が、1ストライクからアーリンの高め速球を捉え、左中間席へ持っていった。「久々に良い形で打てました。完璧だったんですけど、久々すぎて入るかどうか分からなかったです」との言葉とは裏腹に、ゆっくりと一塁を回った。

蛍光色で、もやもやを吹き飛ばした。昨季は32本塁打で初のタイトルを獲得。今季も開幕4戦目の3月30日ロッテ戦で1号を放ったが、以降、柵越えはなかった。「ホームランが出ていないというのは意識していましたけど、それよりも得点圏でランナーをかえせていないことにフラストレーションがたまっていました」。得点圏打率は2割7厘。チームの勝利につながる一打を欲した。だからこそ「今日、良い形で久々にホームランが出たので、これを機に、いいきっかけにしたい」と前を向く。

この日は年に1度の母の日。1日限定でバット、スパイク、リストバンドをピンク色に染めた。母明美さんからは幼少期から「感謝の気持ちを持って、謙虚にやりなさい」と口酸っぱく言われた。「頑張って産んでくれて今の自分がある。何とか、結果として良い形で頑張っている姿を見せたいと思っていたので、こういう日に打ててよかったです」。母の日は通算33打数11安打、打率3割3分3厘、2本塁打、4打点。誰かを思う力は、計り知れないパワーをもたらす。

1分けを挟み、チームの連敗を3で止めた。2位ソフトバンクとの0・5ゲーム差を守り、首位を維持した。「まだまだ試合数もあるし、1試合1試合、目の前の試合の勝ちにこだわって戦っていきたい」。母を思う気持ちも、チームの勝利へ願う気持ちも、変わらずに新たな1日を迎える。【桑原幹久】

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