日本シリーズは資産最少球団同士の対決だった!?
華やかな球場演出に、年俸数億円のスター選手が躍動! 大きなお金が動くのがプロ野球の世界。
ヤクルトの日本一で決着したシーズンですが、各球団の経営状態ってどうなんだろう?
経済力NO・1はどのチーム? 収益は黒字? 赤字? 気になりますよね。
プロ野球チームも1つの企業。官報に開示されている決算公告の数字を確認してみました。
コロナ禍に見舞われた、昨季20年シーズンと19年シーズンの直近二期を比較。
読み取れたポイントは以下の通りです
◆ポイント◆
○総資産1位はソフトバンク1134億円。2位はDeNA164億円
○セ・リーグ最少はヤクルト44億円、パ最少はオリックス22億円
○コロナ禍の20年、単年収益(当期利益)は7球団が赤字転落
○直近2年の連続黒字はDeNAのみ。黒字転換は楽天だけ
○自己資本比率は日本ハムの93%が最高、最少はオリックスの4.1%
○巨人、中日は球団単体での決算公告の開示なし。オリックスの当期利益は非公開
○決算時期は球団で異なるが、直近二期の内容をシーズンの数字として比較
まずは主な数字を見てみましょう。
■球場は大きな資産
総資産を見ると、ソフトバンクが約1134億円と圧倒的。ソフトバンク以外の9球団の平均が約98億円ですから、まさに桁違いです。
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これは球団として球場(福岡PayPayドーム)を所有していることが要因です。
さらに数字を細かく見ると「固定資産」が1090億円以上を占めています。
「球団と球場」の関係は多種多様です。例えば阪神は、親会社の阪神電鉄が甲子園球場を所有。甲子園は「阪神球団」としての資産に含まれません。
オリックスの本拠地「京セラドーム大阪」も、親会社のオリックスグループが所有。同じく球団としての資産にはカウントさせれません。
また楽天の場合は、本拠地「楽天生命パーク」は宮城県の所有物で、そのネーミングライツを所有している形です。
プロ球団にとって、球場を所有するメリットは多数あります。
「自前」ならまず賃料を払う必要がなく、いつでも自由に使用可能。客席の改修なども自由に行えます。
場内の広告・宣伝収入や売店の売り上げからの収益もあるし、使用しない日にはイベントなどに貸し出して賃料を得ることが出来ます。
もちろん球場の維持・管理には莫大なコストがかかり、取得のため大きな負債を抱えることにもなりますが、収益を生む大きな「資産」となります。
17年から20年まで、4年連続日本一に輝いたソフトバンクは、20年の選手年俸総額が65億2680万円で12球団1位(2位は巨人43億3070万円)でした。
多くの運営資金もかかっていますが、それをまかなって余りあるほどの「総資産」を所有していることが分かります。
■ コロナ禍で大幅減益
【表1】【表2】の「当期利益」が、シーズン単年の収益です。コロナ禍で無観客試合や入場制限が続いた20年は、金額を公表している9球団のうち実に7球団が赤字に転落。
唯一の連続黒字のDeNAも、前年から65.6%の大幅な収益減。逆に赤字から黒字へと転換したのは、楽天のみと各球団の苦労が見て取れます。
参考までに19年と20年の観客動員は以下の通りです。
■高い自己資本比率は新球場のため
最後に「自己資本比率」も確認してみましょう。企業の総資産に占める純資産の割合で、会社の安全性を評価する指標となります。
一般的に50%以上で良好と言われていますが、業種などによっても大きく異なるため、あくまでも1つの基準となります。
球界最高は日本ハムの93.3%で最低はオリックスの4.1%。球団によりばらつきはありますが日本ハムの数字は圧倒的。内容を数字を詳しく見てみましょう。
前年度までの利益の繰り越しと当期の内部留保を合わせた「利益剰余金」は、89億4600万円。負債も少なく多くの内部留保を有しているのは、新球場建設を控えていることが考えられます。
北海道・北広島市に新球場「エスコンフィールドHOKKAIDO」を建設中で、23年シーズンから開業を予定しています。
現在の日本ハムは本拠地「札幌ドーム」を、所有者の札幌市から借りている状態です。
ソフトバンクの事例でも説明したように、「自前」の球場を持つことは収益面で大きなメリットとなります。
さらに新球場を中心に「北海道ボールパークFビレッジ」を建設。メジャーリーグのような「ボールパーク」として地域一帯をもり立てる構想です。
新球場建設にあたり、19年10月に株式会社「ファイターズ スポーツ&エンターテイメント」を設立。
同社が新球場及びボールパークを所有・運営することになります。同社の筆頭株主は日本ハム球団となっています。
以上、球団の決算内容を見てきましたが、再度まとめです。
◆まとめ◆
○総資産1134億円で1位のソフトバンクは球場所有によるメリットがある
○コロナ禍で7球団が赤字転落。連続黒字のDeNAも大幅減収だった
○日本ハムの「自己資本比率」の高さは、新球場建設を控えていることが考えられる
ペナントレースの勝敗を見るのは面白いですが、球団の決算内容もその年の「成績」です。
球団により決算期は異なるので、今季21年シーズンに該当する数字が出そろうのは来年22年の4月初めころ。
〝順位〟や内容に変動はあるのか? 楽しみにしたいと思います。 【鈴木正章】