職人芸で試合を決めた。楽天銀次内野手(34)が、0-0で迎えた5回1死二、三塁から先制の左前適時打を放った。これまで楽天戦で先発無敗だったオリックス山本から待望の先制点を挙げ、打線に火をつけた。いぶし銀の打撃に続き、浅村が15号3ラン。この回一挙4得点でイケイケムードを引き寄せた。球界のエースに18年9月19日以来の黒星をつけ、首位奪還へ弾みをつける一戦となった。

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銀次は驚きから始まった。19年7月7日日本ハム戦以来の「2番」で先発。「絶対うそだと思いました。でも本当だった」と困惑気味。5回の第3打席は、1死一、三塁のチャンスで打席に入った。

4球目で空振りすると、西川が二盗に成功。二、三塁とチャンス拡大した。だが、カウント2-2と追い込まれた。「甘い球は来なかった。開き直りもちょっとあって、当てたらなんとかなるということを考えながら、2ストライク追い込まれてからのバッティングはしました」。5球目の内角を突く147キロカットボールをファウルとすると、6球目。ストライクゾーンから低めのボールゾーンへ鋭く落ちる145キロフォークをすくい上げた。打球は左前にポトリと落ち、先制の適時打。ベンチに向かって右手を突き上げた。

鋭い打球でも長打でもない。だが、点は入る。「とにかく必死にバットに当てようというのは強く思っていました。それだけです」と表情を引き締める。力投を続ける田中将に援護を-。その一心でバットを振り抜いた。13年のリーグ優勝と日本一を経験した仲間。田中将に白星がつき「本当にうれしいです。将大も頑張って丁寧に投げていた。1点なんとか取ろうと思って、より集中しました」と笑顔を見せた。

首位ソフトバンクとは2・5差、2位西武とは2差の3位。まだまだ追う立場だが、難敵山本を打ったことは、再浮上のきっかけになり得る。「まだ半分試合あるのでしっかり1戦1戦戦って勝ちたい」。チームとファンの夢を乗せて、勝利につながる打撃を目指す。【湯本勝大】

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