甲子園で熱戦が続く。日刊スポーツも長年、真夏の青春群像を報じている。地方大会も含め、何万人もの高校球児のエピソードがデータベースにも残る。たどると、とりわけ印象深い言葉を見つけた。

「これからの人生で成功したり、あいつを抜かせる将来にできるようにしたいです」

ロッテ山口航輝外野手(21)が明桜(秋田)時代、県決勝で敗れた直後の言葉だ。あいつ-。金足農のエースとして甲子園で脚光を浴びた日本ハム吉田輝星投手(21)のことだ。言葉の背景を4年たった今、山口に尋ねる機会があった。

「あの日、記者の皆さんに話した時は、もう泣き終わってましたね。普通に淡々と。やられて、そこで自分は終わったんで、高校生活は。悔しかったですし、次の舞台で勝つしかないと思ったので」

甲子園を目指し、大阪から挑戦に来た。1年生の時からうわさで聞いていた。「いい投手、気持ちの強いヤツがいる、って」。山口自身も肩を脱臼するまでは、投打両面でプロの注目を集めた存在。途中までは勝っている自信もあった。2年夏は決勝で吉田を破り、甲子園へ進んだ。

「普通の投手と思ってました。それが、1年で印象が変わりましたね。まっすぐのスピードも違ったし、変化球も良くなって」

最後の夏は決勝で4打数3三振。チームも自分も敗れた。また抜かしたい。高校球児での最後の言葉は、今もその思いのまま。

「なんか“吉田の山口”ってなってると思うんですけど、この先どれだけ自分が打っても、それは変わることが絶対ないと思うんで、それほど大事な1試合やったんかなと思います。あいつがいるから頑張れる、頑張らないといけない。輝星にやり返すのは現時点では自分しかいないんで。やられた仲間たちの思いも背負って立たないと」

お互いプロ4年目。ともに自身の立場を確立すべく汗を流す。【金子真仁】