雨中でも堂々の風格だった。オリックス山本由伸投手(24)が、楽天打線を7回86球2安打無失点に封じ、リーグトップの15勝目をマークした。勝率、防御率、奪三振などでリーグ1位を独走。2年連続の主要タイトル独占が濃厚となってきた。首位ソフトバンクと依然ゲーム差なしの2位。残りは3試合。若きエースは、中5日で本拠地最終戦となる30日ロッテ戦(京セラドーム大阪)で先発する可能性も残した。

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雨で荒れたマウンドを、冷静にならした。山本は、地面を掘ったり、土で埋めたり、感触を確かめた。

「僕のこだわりは(マウンドを)ずっと同じ状態に保つこと。平らに保てないと、踏み込む重心が変わっちゃうので」

2点の先制点をもらった初回。雨粒が細かくなると、ロジンの交換を要求した。グラウンドキーパーの整備を確認すると「(雨なのに)結構よかったです、マウンド。キーパーさんがすごかった」と“神整備”に驚いた。

投球練習の初回で左足をあげるタイミングを2度調整し「最初に6、7割ぐらいで1球目を投げて、感覚を確かめる」と負けられない一戦に向かった。

重圧の中での発見が生きた。昨夏の東京五輪準決勝、韓国戦(横浜)だった。「あのとき、1球目が超滑ったんです。そこから、気にするようになった。マウンドは高さ、硬さ、見え方だけじゃなくて、砂の感触も味わうんだなって」。序盤に3つ目のアウトを奪い、一塁側ベンチに引き揚げる際、捕手若月の顔に泥がついているのを笑顔で指摘できるほど、冷静だった。

7回86球2安打無失点で今季15勝目。これで7月23日ソフトバンク戦(京セラドーム大阪)から9戦負けなしの6連勝。15勝、防御率1・65、195奪三振、勝率7割5分はリーグトップを独走。NPB史上初の2年連続「投手4冠」が濃厚となった。

7回の降板時に中嶋監督とベンチ奥で話し合った。見慣れない光景に「秘密っす」とエースは笑う。86球の降板とあり、優勝争いの状況次第では、中5日で本拠地最終戦となる30日ロッテ戦(京セラドーム大阪)で先発する可能性も残した。

背番号18の快投で球団合併後は初となる2年連続Aクラス入りを決めた。貯金を今季最多タイの10に戻し、CS出場権を確保。中嶋監督は「悔いが残らないようにやるだけ。やれると思ってます」と頂点だけを見る。残り3試合。描く青写真のパズルに、ラストピースをはめこむ。【真柴健】

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