ヤクルトの“育成力”が、セ・リーグ連覇を下支えした。高卒3年目の長岡秀樹内野手(20)らヤングスワローズが光った。

何かが起きるんじゃないか、そんなワクワク感を抱かせてくれる。コーチや2軍監督、1軍監督を長年務めた小川淳司GM(65)は「使い続けた高津監督をはじめコーチ陣とそれに応えた選手がかみ合った結果」と言う。長岡は八千代松陰(千葉)からドラフト5位指名。甲子園出場経験はなく、ドラフト候補にリストアップしていない球団もあった。プロ入り後、育成プランに沿って練習する中で「体力強化」が最大の課題だった。練習量が一気に増えるプロの世界。練習と実戦をこなす中で、体力をつけることが求められた。

昨年、育成部門が新設された。長年、1軍や2軍で内野守備走塁コーチを務めた土橋勝征氏(53)がチーフコーチに就任。居残りでの守備練習など、徹底的に向き合った。小川GMは「土橋コーチのしつこい練習を頑張り抜いた。それに耐えられる丈夫さもあった」。昨年途中、2軍から長岡の守備力を高く評価する声が上がった。今春1軍キャンプに追加招集されたのも、高評価があったからこそ。2軍で培った体力で、22年シーズンを駆け抜けた。今では、すぐにマウンドへ駆けつけるたくましい姿に、小川GMは目を細める。

監督時代の19年。プロ2年目の村上を根気強く使い続けた。「監督としてプレーが楽しみな選手はそんなに多くない。それが村上であり、高橋(奎二)だった」。36本塁打を記録した一方で184三振。周囲から「ファームで調整させた方がいいのでは」と意見もあった。しかし、チーム再建という監督の思いに応えた村上が今では中心だ。リーグ連覇から2年連続の日本一、そして黄金期へ。「育成が成功している、とはまだ言い切れない。他のポジションの戦力が足りないし、さらに次に進まないといけない」。球団の挑戦は続いていく。【保坂恭子】