日本ハム加藤貴之投手(30)が、72年ぶりの偉業を成し遂げた。この日も小気味よくアウトを重ね、8回5安打2失点。最速140キロ、最遅97キロと43キロ差の緩急で楽天打線を揺さぶった。7年目で最多8勝目。ヒーローインタビューでは「最後の最後で、根性で投げられたからかなと思います」とポーカーフェースを崩した。

プロ野球史上、規定投球回に達して最も四球が少なかったのは、50年の野口(阪急)の14個。この日2四球を与えた加藤は11四球で、両リーグ合わせても、次は巨人菅野の25個。数字が際立つ。「本当に何も意識していない。ミット目がけて投げているだけ」。首脳陣からは今季最後の登板を告げられていた中で持ち味全開に締めくくった。

目標だった規定投球回は4回無死一塁、辰己を空振り三振に切ってクリアした。7月に新型コロナ陽性判定、腰痛での離脱も強いられ「すごい不安はありました」。2年連続での規定投球回到達の喜びは格別だった。「出来なかったら出来なかったで、仕方ない。そのために自分で頑張るしかないと思った。今年のほうが(到達出来て)良かったかな」と、かみしめた。

新庄監督は「さすがでしたね、加藤君は。安定感しかない」と大絶賛。「多分、彼本人も『なんで野手の方は打てないんだろう』と思っているくらい、ストライクをバンバン、バンバンいっていた」と攻めの姿勢を評価した。

昨季は史上最遅となるプロ初完封勝利を挙げた。無欲が売りの左のエースは「しっかりと練習して、開幕ローテーションに入れるように頑張ります!」と珍しく声を張り上げた。「エスコンフィールド北海道」へと本拠地を移す来季、左腕でさらなる歴史を刻んでいく。【田中彩友美】

 

▼加藤が規定投球回をクリアし、147回2/3を投げて与四球は11個。与四球数のシーズン最少記録(規定投球回以上で春秋制のシーズンを除く)は50年野口(阪急)の14個で、加藤が今後登板しなければ72年ぶりに記録を更新する。ここまでの9イニングあたりの与四球数を示す与四球率は0・67で、これも前記の50年野口がマークした0・69を上回るプロ野球新記録になる。

○…チーム最多10勝を挙げている伊藤が、貫禄のプロ初セーブを挙げた。1点リードの9回にマウンドに上がり初の抑え挑戦で3者凡退。“追いロジン”で注目された昨年の東京五輪では、侍ジャパンの救援として大活躍した。「緊張で、いつも以上の汗が出ていたので」と、当時さながら大量のロジンの粉を指先につけての全力投球だった。気合満点の16球に、新庄監督は「直球で空振りが取れる」と魅了されていた。

○…谷内の一打が、貴重な2得点を挙げた。1点リードの4回2死一、二塁でカウント1-0からの2球目を右前へきれいに流し打ち。二塁から杉谷がかえり、右翼手の送球ミスの間に一走の上川畑も生還した。「五十幡や上川畑が球数を投げさせて粘っていたので、僕はファーストストライクから積極的にいきました。皆さんのおかげです」と感謝した。

○…宇佐見がキャリアハイとなる先制の5号ソロを放った。3回1死走者なしから楽天早川の144キロ直球を豪快に引っ張り、右翼スタンドへ。先発加藤を援護する1発に「今までで一番の当たり。ボスから“バリーボンズ打法”を教えてもらったので、ずっとやってきたことが出せた」と胸を張った。捕手としても加藤、伊藤を好リードし攻守で勝利に貢献した。