ヤクルト嶋基宏捕手兼任コーチ補佐(37)が28日、今季限りでの現役引退を表明し、神宮で引退会見を開いた。以下、一問一答。

(冒頭自ら)

みなさまお忙しい中、お集まりいただきまして、本当にありがとうございます。私、嶋基宏は今シーズン限りで、現役生活を引退することを決断しましたので、そのご報告をさせていただきます

 

--決断のタイミングと理由

昨年優勝した後、契約更改で、今シーズン選手兼任という形をとらせていただいて。その時にある程度、今年1年やったら…という覚悟は、僕の中で出来ていたので。そういう思いで臨んだ1年だったので。そう思いながら。思いながらというのはちょっと失礼ですけど。今シーズンが終わったら、そのタイミングだなとは、自分の中で思っていました。

 

--昨年末からとのことだが、この1年で思いは変わらず

まだやりたいなと思う日もあれば、このままじゃしんどいなという日もあれば。その繰り返しで。でも少しずつ、夏過ぎくらいから。今年のタイミングかなというのが強くなってきましたので。そういう思いを抱きながらプレーするのも失礼なことですし。引き際というのも非常に大事だなと僕自身も感じていますので、このタイミングなんじゃないかなと思いました。

 

--決断するにあたり、後悔などは

それは言い出したらきりがないですけど。もっと体を大事にしていたらよかったなとか、もっと練習したらよかったなとか、もっと打者の研究をして、もっと勉強していたら、違った結果になっていたんじゃないかとか。そういうのは言い出したらきりがないですけど、その時その時、これが正解と思ってやってきたので。後悔ではないですけど、まあ、うん。やりきったなという思いもありますし、ほんと、いろんな感情が今はあります。

 

--引退決断にあたり1番に相談、報告したのは

家族にはある程度、話はしていたんですが。もう理解はしていましたし。そろそろだなというのが妻も感じていたみたいなので。話したときは、お疲れさまという。そうですね。しっかりそこは理解してくれたと思います。

 

--あらためて野球生活を振り返って

(笑顔で)僕はもともとキャッチャーをやったことがなくて、大学2年生からキャッチャー始めて。そのキャッチャーをやるきっかけを作ってくれたのが、竹田(利秋)監督で。大学(国学院大)の監督なんですけども。まずそこで僕の人生の大きな分岐点があり。楽天イーグルスに入団したことによって、野村監督にキャッチャーのイロハを教えていただいて。どんなにミスをしても我慢して使っていただいて。そこが僕の第2の野球人生の分岐点であり。そういう分岐点で、本当にいい人と巡り合えて、またそこでいい指導をしていただいて、それが今の僕につながっていますので。この16年間をひと言で振り返るのは厳しいですけど、本当に分岐点、分岐点で、すばらしい人たちに巡り合えたのが、ここまで出来た要因かなとは思います。

 

--野村監督からの指導は印象に残っている

そうですね…いろいろ言われすぎて、1つとはなかなか言えないですけど、どれだけミスしても、どれだ点を取られた次の日も、我慢強く使っていただきましたし。いつもキャッチャーを育てるには何年もかかるといって、それを我慢強く僕を使い続けてくれた。それに何とか応えたいとやってきましたんで。ひと言では難しいですけど。本当に感謝しかありません。

 

--野村監督に報告は

そうですね。まずは本当にありがとうございましたと報告をさせていただきたいと思いますし。これから僕も、野村監督のように名将と言われるような指導者になっていきたいと、自分自身、思っていますので。これからまた第2の人生が始まりますので。これからも頑張っていきますと。そういう報告もしていきたいです。

 

--第2の人生。今まで野球に費やしてきた時間は何に費やしていきたい

まずは、ええと…スワローズに来て3年たつんですけど、ほんとに最初の(言葉に詰まる。シャッター音多数)…。最初、仙台を離れて…(また言葉に詰まる)……家族を残して。妻には非常につらい思いとか、大変な思いをさせてしまった。子供たちの成長も近くて見届けることができなかったので、これから少しは時間ができると思いますので。(涙)子どもたちの成長をね、しっかりと見届けていきたいと思います。16年間、いい思いも、しんどい時もありましたけど。それを支えてくださったたくさんの方々に少しずつ恩返し出来るようにやっていきたいと思います。

 

--家族へ

そうですね、最近はあまり試合に出ているところを見せられていなかったので。これからは逆に、気を付けて学校行ってこいよ(涙)。そういうことを言ってあげられる父親でいたいなと思います。

--大事にしてきたこと

レギュラーとりたいとか、お金を稼ぎたいとか、自分勝手にやっていた思いが多かったですけど、2011年の東日本大震災を機に、野球は人のためにやらないといけないなと。考え方が変わった。今、野球に対する考え方とか、少しずつ、年を重ねるにつれ変化してきましたので。自分の信念は年によって少し変わってきていると感じている。今は、人のために何かをしたいというのが一番強い信念だと思います。

--今季もコーチの立場で声かけ、バッピ、献身的な姿が見られた

今年スタートした時点では、どこかで試合に出たい思いはあったんですけど。途中くらいから若い選手がどんどん成長していくのが、僕にとっても励みになっていったので。行動も少しずつ変わってきましたし、後輩にかける言葉も、少しずつ変化してきたのかなと。

--中村、内山らへ

中村は球界を代表するキャッチャーで感性も鋭くて、あまり言うことはないです。ケガが野球人生を左右するので自分の体を大事にしろよ、とはいつも伝えています。気持ちが高ぶりすぎてしまうので。これからも口酸っぱく言っていきたい。(内山)壮真に関しては、これからスキルもそうですし、もっと野球を好きになって、研究して。僕も野村監督や星野監督に、キャッチャーは野球博士でないとダメだと言われたので。

--一緒に高め合ってきた仲間に

ソフトバンク甲斐拓也と次に対戦できるのは日本シリーズに進出して対戦することしかないと思うので。また日本シリーズで実現できたらと思います。体を大事にしろよとは口酸っぱく言っています。

--2つのチームで日本一

イーグルスで優勝した時は試合に出させてもらっていた。でも今シーズンはサポート。ちょっと違った意味の優勝でしたけど。僕の人生にとって大きな財産。本当に素晴らしいチームに呼んでいただいて、素晴らしい組織の中で野球ができた。

--ヤクルトに対して

僕にとって初めての移籍。あたたかく迎えてもらえるのかなとか、最初は移籍しない方がよかったのかなと思ったんですけど、日がたつにつれて、このチームでできて良かったという思いが強くなった。いいチームで野球ができて、野球人生終われるのは非常に幸せです。

--侍でも活躍した

代表として試合が出来るというのは、言葉では言い表せない。食事が喉を通らないくらい、前の日から緊張して。そういう経験、誰もが出来る経験ではないので。貴重な経験だったと思います。そこで(山田)哲人、中村とも野球が出来ましたんで。そういう意味では非常にいい経験をさせていただいたなと思います。

--最も印象に残るシーンは

星野監督に初めて会った時の恐怖心が僕の野球人生では衝撃的だったかもしれないです(笑い)

--生まれ変わるなら

次は違うポジションをやってみたいなと。マウンドからキャッチャーに投げる景色を経験したことないので。ほんとにピッチャーは大変な仕事をしていると思うので、1回でいいから経験したいなと思います。

--野球とは

難しい質問ですね。う~ん、宝物ですかね。小さい時からずっと1つのボールを追いかけて。今はその野球自体が僕にとっては宝物なのかなと思います。

--ファンの存在は

イーグルスではたくさん最下位も経験しましたが、最後まで声援を送っていただきました。感謝しかありません。ヤクルトにきてからは1年目は無観客。昨年も人数制限あり、今年も制限がある中で、優勝が近づくにつれて球場いっぱい応援にかけつけてくれて。共通して、あたたかいファンに16年間応援してもらったと思います。

--13年の日本一は

今までの努力が報われた思い。選手、チームみんな、それ以上にファンの方々、被災されて苦しんでいる方が喜んでいる姿を見て、ほんとに日本一になって良かったと思いました。僕にとっては非常にうれしかったですね。

--星野監督との出会い

僕が小さい頃は中日の試合を見ていましたので。イスを蹴り上げたり…。その監督が目の前にいるというだけで非常に身が引き締まるというか。そういう思いでいました。

--楽天の仲間からは

ほとんどの選手には伝えてないです。イーグルスも大事な試合を戦っている中で、連絡が迷惑になるかもしれないので。そういう連絡はほとんどしてないです。

--田中将大と組んだ

まずは同期で入団させていただいて。野球に対する姿勢、ストイックさを若い頃から感じていました。年々球種を増やしたり、スピードが上がったり、誰が見ても成長している。野球との向き合い方、すばらしい。後輩ですけど、たくさん学ばせていただきました。24勝0敗。最後まで勝ち進んでくれたのは。それを手土産にメジャーも活躍。かっこいいとしか言えない。いつもすごいなとか。組んでいて、なるほどと思うことたくさんありました。このプレッシャーにずっと打ち勝ってきている。まだまだ彼だったら、勝っていけるんじゃないかと思います。

--野村監督との思い出は

褒められることがほとんどないので。いつも口酸っぱく、打者をよく見ろと常に言われてきました。右目でボール見て、左目でバッター見ろとか、常に言われてましたね。今の高津監督はスワローズの黄金期。高津監督の言葉に、野村監督と同じこと言っているなと感じることはありますし。高津監督が細かい野球を非常に大事にしているのは、野村監督に似ているなというのはあります。

--今後は

具体的には決まってないですけど。野球は少しずつ進化、変わってきている部分もある。いろんな情報がある中で、昔とは明らかに違う。自分自身ももっともっと勉強して。それを分かりやすく伝えていける指導者にならないといけないなと。

--「野球の底力」のスピーチについて

今になってみたら、言わなければ……あの言葉が自分のプレッシャーになった時期もありました。でも2013年の優勝で肩の荷が下りたのも事実ですし。野球には人を喜ばせたり、感動させたりする力があると感じることができました。歓声とか選手の涙を見たときに、野球とはこういう力があるんだなとあらためて感じることができた。