阪神前川右京外野手(20)が地元で高卒3年目のブレークを誓った。7日、出身の三重県津市で行われた「二十歳のつどい」に出席。原点の地で中学時代の友人から激励も受け、レギュラーどりの決意を新たにした。阪神の高卒野手で3年目のブレークといえば日本ハム新庄剛志監督(51)。大人の階段を上がった若武者スラッガーは「打ち勝つ」と自慢のバットで激戦の外野争いに殴り込みをかける。
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前川は晴れの日に合わせて新調したスーツにネクタイ、ポケットチーフまで渋いブラウン系で決めた。「ちょっと暗めに、大人っぽく」。2000人超の同学年でごった返した大会場の中で、ピシッと背筋を伸ばす立ち姿が目立っていた。
津市では中学までを過ごした。懐かしい顔と旧交を温め、「もっともっと頑張ってや」と多くの激励を受けたという。今季に勝負をかける前川もその期待を受け止めている。昨年は念願の1軍デビューを果たし、初安打も記録。飛躍への土台を作った。球団やファンの期待も高まる一方だが、慢心どころか、危機感を感じていた。
「去年は33試合に出させてもらったけど、その倍以上は出ないと(存在感が)消えていく。数字の世界なので数字を残すために必死にもがきたい。1日1日、食らいつける準備をすることが大事と思う」
高卒野手のスターが待たれる阪神で、思い起こされるのは92年の新庄剛志。同じ高卒3年目で初アーチを含む11本塁打と一気に開花した。前川は「1軍の打席に立つことが大事ですけど、高卒3年目でそのくらいの数字を残せるのはレギュラーを取れるような数字にもなる。そのくらいが理想ですね」と引き締めた。
「二十歳のつどい」の会場になった「サオリーナ」は、津市出身でレスリング五輪3連覇、世界最強といわれた吉田沙保里が命名したアリーナ。実は前川は中学時代に施設内のジムでトレーニングしていた縁がある。入団時には津市の大先輩のように「気持ちの強い選手に」と誓っていた。
森下、ノイジーら候補がひしめく外野で「倍以上の出場」は簡単ではないが、レギュラーへの決意はブレない。「打ち勝たないといけない。ポジションを奪いたい。1年間頑張って、結果を残して帰ってきたい気持ちが強いです」。故郷の期待に応えるためにも、バットに魂を込める。【柏原誠】
◆前川右京(まえがわ・うきょう)2003年(平15)5月18日生まれ、三重県出身。智弁学園では1年夏、3年春夏と甲子園に出場し、3年夏は準優勝。高校通算37本塁打。21年ドラフト4位で阪神入り。2年目の昨年5月30日西武戦に6番・指名打者で先発し、プロ初出場を果たした。6月6日楽天戦で初安打。通算33試合、24安打、0本塁打、7打点、打率2割5分5厘。176センチ、86キロ。左投げ左打ち。
◆3年目の新庄 正三塁手オマリーの故障離脱を受け、92年5月26日大洋(現DeNA)戦に7番・三塁で先発出場。2回の初打席で初球をプロ初本塁打し、勢いに乗った。夏場からは中堅に回り、親友の亀山とともにチームをけん引した。9月16日広島戦では、8回に2死満塁の大ピンチに、山崎隆の右中間ライナーをダイビング捕球。9回には広島の切り札大野にサヨナラ2ランを見舞うなど、ラッキーボーイ的な存在となった。惜しくも優勝は逃したが、この年95試合に出場し11本塁打の活躍。一気にスター選手へとのし上がった。
◆阪神近年の高卒野手 定位置を完全に確保する選手は極めて少ない。北條が16年に122試合に出場し遊撃のレギュラーとなったかに見えたが、失速し昨季限りで退団した。17年には中谷がチーム最多の20本塁打と、和製大砲誕生かと思われたが、活躍は1年限りに終わった。昨季は小幡が開幕戦で遊撃手で先発出場も、ポジションは木浪に奪われた。ヤクルトは村上、巨人では岡本和と、高卒選手が絶対的な主砲に育っていることと対照的だ。



