今季限りで現役引退する阪神原口文仁内野手(33)が最終戦に出場した。7回に代打。出番に合わせて登板した帝京の後輩・清水と対戦し、直球3球を力強く振って、いい当たりの中飛。「しっかり振れました。小さいころの3回振って帰ってこい、の教えを思い出しましたね」。9回には4年ぶりのマスクで驚かせた。「点差が開いたら」の条件で練習もしなかった。岩貞との名コンビ復活で、打者1人と対戦。長坂に借りたミットを高々と上げて大歓声に応えた。
試合後のセレモニー。「鳴尾浜から始まったプロ野球生活。近くて遠い甲子園を目指し、たくさんケガも悔しい思いもしましたが目標があったので心が折れることはありませんでした」と胸を張った。6分超の大半を感謝の言葉で埋め尽くした。小さな3人の娘を太い両腕で抱き上げると涙がこぼれた。「栄光の架橋」が流れる中、代打の“師匠”川藤幸三氏やヤクルト青柳も登場した。胴上げのあと、場内をゆっくりと回って感謝を伝えた。
最後の1年も苦しかった。4月8日まで無安打。「パパはまだヒット打ってないんだね」。そう娘が話していたと翌9日に夫人から聞いた。喜ばせたい一心で奮い立った。「これくらいでくじけていられませんよ」。その後に降格。2軍でも出られない時期があったが歯を食いしばった。
19年にステージ3の大腸がんを宣告された。最悪のことも想定した。スマホにはその時の気持ちを書き留めたメモが残る。「娘たちが成人式を迎える姿を見たい。妻がおばあちゃんになる姿を見たい」-。生きるため、グラウンドに戻るため闘病生活に耐えた。感謝と喜びに包まれた復活劇に「第2の野球人生が始まる感じだった」と言った。
まだユニホームは脱がず、CSファイナル、日本シリーズに備える。「ここからまた本当にシビアな戦いに入っていく。戦力になれるよう最後までやり抜きます」と約束。最後の大仕事に向かう。【柏原誠】



