WBCで11日に日本と対戦するチェコの全貌が見えてきた。

8日、東京ドームで2時間の公式練習。他国と違い、半袖に短パンで打撃練習を行う選手もいるなど、リラックスムードが漂った。だが、2日の来日後は、社会人の強豪JR九州を破るなど練習試合で3勝1敗。強いのか弱いのか、実情に迫った。

練習後のハジム監督は記者会見で「強いチームと戦うので簡単にはいかない。この大会だけではなく、チェコ共和国に野球が広がって、若い人が興味を持ってくれればいい。2006年の大会を見たが、死ぬまでに東京ドームでチェコの試合ができればと思っていた。夢のようだ。チェコ代表というよりヨーロッパ代表として野球の地位を確立したい。我々が先頭となってけん引したい」と大会での目標を掲げた。

総人口が約1000万人のチェコだが、野球人口は約7000人。アイスホッケーやサッカーが盛んで、野球はマイナースポーツという位置付けだ。しかし、ソフトボールは人気があり、国際大会で活躍している。ペテル・ジーマ主将は、母がソフトボールの同国代表だったことから、7歳から野球に触れていたという。

国内リーグもある。プロではなく、スポーツクラブでの1つの競技という扱い。選手はほぼ全員、学生か、野球ではない職業を持っている。ジーマは金融トレーダー、エースのシュナイダーは消防士、ミナリクは不動産業、サトリアは電気技師。当然、休暇が取れなければ、大会に参加できない。チェコで選手、コーチの経験がある田久保賢植さん(38)によると「リーグの打率トップ10の選手が今大会にあまり参加できていない。有給が取れなかったから」と説明した。

今大会には、メジャーリーグで815試合に出場しているエリック・ソガード内野手も参加している。米国人だが、母アナさんがプラハ郊外で生まれたため、出場資格を持つ。ソガードは「母は『夢がかなった』と言っている。弟が以前に大会に出たことがあるんだ。興奮しているよ」と話した。来日は、マリナーズに在籍していた20年以来3年ぶり。イチローの引退試合となった開幕シリーズだった。アスレチックス時代には松井秀喜とも同僚で、日本との縁は深い。「世界のトップ選手と素晴らしい球場で戦える。明日からいくつかの驚きを世界に与えるつもりだ」と意気込んだ。

2日から宮崎で合宿を行ってきた。休日にはビーチに繰り出した。ジーマ主将は「サーフィンをしてきたよ」と仰天告白し、キムチラーメンに舌鼓を打ったラーメン屋ではファンだった松井秀喜の巨人時代のサインを見つけて興奮したという。今後も新宿の焼き鳥屋に繰り出す予定だ。

11日の日本戦は最速165キロ右腕の佐々木朗希投手と対峙(たいじ)する可能性が高い。田久保さんは「国内でも95マイル(約153キロ)を投げる投手いる。スピードボールは見ている」と対応可能とみる。神経科医でもあるハジム監督は、敗れた中日戦での栗山英樹監督の表情から「苦しそう。ミラクルはゼロではない」と、つぶやいたという。医師や金融マンら、参加全チームで最高の頭脳派が集まっているチェコ。日本にひと泡吹かせる可能性はある。【斎藤直樹】