ワールド・ボクシング・スーパーシリーズ(WBSS)バンタム級制覇を成し遂げた2団体統一バンタム級王者井上尚弥(26=大橋)の20年初戦の骨格が、もう見えてきた。5階級制覇王者ノニト・ドネア(37=フィリピン)とのWBSS決勝を制したのは11月7日。約1カ月後となる12月9日から所属先の大橋ジムで本格的に始動した。

「ミット打ちが鈍かった。こんなに休んだのは初めてなので」と苦笑いした後、自然と気持ちを引き締めた。大橋秀行会長から「来年初戦は米国で間違いない。ラスベガスもほぼ確定。4月ぐらいということで」と明かされたことも要因だろう。井上は「4月頃を想定し、逆算して最高のコンディションを仕上げたい」と眼光鋭く口にした。

17年9月に米デビューを果たしているが、聖地ラスベガスは初進出となる。その「ベガスデビュー」は4月という具体的な時期も内定し、もうWBSS優勝の余韻から覚めている。対戦相手の候補として自ら挙げたのはWBO世界同級王者ジョンリール・カシメロ(フィリピン)だった。

「カシメロが標的です。あとはWBOと(契約した米プロモート大手)トップランク、カシメロのプロモーター(マニー・パッキャオ・プロモーション)との交渉次第ですけれど」。

各団体の承認さえ得られれば、WBAスーパー、IBF、WBOが懸けられる日本人初の3団体統一戦に臨むことになる。ラスベガスで、3団体統一戦。5カ月以上も先の大舞台が、より具体的に浮かび上がっている。

ドネア戦後、右眼窩(がんか)底を含む2カ所の骨折が判明した井上だが「4月頃なら問題ない」とキッパリ。今週中に都内の病院に再検査を受けるが「スパーリングできるのは2カ月後ぐらい」とイメージしている。2月には海外合宿を想定し、全体的なベガスデビューへの道のりも思い描いている。

緊張感あるカードが組まれそうなことで、井上のモチベーションは高い。「相手がカシメロに決まれば、ドネアよりも危険な選手。獣的で怖い者知らずですから。相手の土俵に乗らないようにしないといけない」。慎重なファイトになることを予想しつつ「前半をしのげば(カシメロの)メッキがぼろぼろとはげてくるかと思う」と試合展開もイメージしながら、3団体統一戦の決定を心待ちにしている。

大橋会長は「海外に行っても今までのようなインパクトのある試合をしてほしい。判定勝ちだったドネア戦もKO勝ち以上のインパクトを残してくれた。KOをファンも望んでいる。判定でも常に倒しにいくのは尚弥の魅力だから」と期待を寄せた。

WBSS優勝からまだ1カ月しか経過していないのに、次々と見えてくる次戦の「輪郭」。それが井上の今の注目度の高さなのだろう。【藤中栄二】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける男たち」)