「どんな形でも勝つことを目標に掲げます」。米総合格闘技ベラトールのバンタム級グランプリ(GP)初戦で敗れたRIZINバンタム級王者の堀口恭司(31=アメリカン・トップチーム)が大会後に語ったのは、そんな力強いひとことだった。
23日(日本時間24日)、米ハワイで臨んだ同GP1回戦でベラトール同級2位パトリック・ミックス(28=米国)と対戦した。10センチ以上身長差のある相手。長い手足を使って引き寄せられ、得意とするグラウンドの攻防に誘(いざな)われた。5回フルラウンドを戦い抜き、最後まで極めさせなかったが、判定で1ポイント差の敗退。現地で見届けたRIZIN榊原信行CEO(58)が「ここまで(堀口の)良さが消された試合は記憶にない」とするなど、そのポイント差以上に厳しい展開を強いられた戦いだった。
昨年12月、王者ペティスに4回KO負けを喫して以来の再起戦も、プロ入り初の連敗。19年11月以来の同級ベルト奪回のチャンスも、遠ざかった。
それでも、一夜明けた24日(日本時間25日)、日本メディアの取材に応じた堀口が口にしたのは、後悔よりも将来に向けた言葉だった。「メシをばかばか食って筋肉をつけまくる。マッチョになる」と、バンタム級仕様の肉体強化を宣言。「夏ぐらいには(次の試合を)できるのではないかと思います」と、早期カムバックに強い意欲を示した。完敗ともいえる敗戦直後の会見。そこで、これほどまでにビジョンを明確にできる選手は、決して多くはないはずだ。
何が堀口を突き動かすのか。それは「格闘技が好き」というシンプルな思いだ。大会前に言っていた。ケガをしても練習がきつくても、ペティスに敗れても体格差が歴然のミックスが相手でも…「格闘技を忘れたいと思ったことは1度もありません」。どんな相手であろうと、どんな逆境であろうと、ワクワクする戦いに変えてしまうのが堀口なのだ。
18年9月、神童、那須川天心と対戦した時もそうだった。グラップリングを封印し、キックボクシングルールで対戦。当然、不利の状況だが、試合では笑顔を隠さなかった。「自分はなんでも言われるがままなので(笑い)。対戦相手を拒まないし『なんでもいいからやります』って言っちゃうんです」。それは、どうしてか。「これが嫌だ、あれが嫌だというのは、自分の考えでは『逃げ』。誰が来ても問題ないと思っているので」。そう、自信あふれる笑顔で教えてくれた。
ケガに対する考え方にも表れる。19年11月には、右膝前十字靱帯(じんたい)断裂と半月板損傷により、RIZINとベラトールのベルトを返上。ここ2年間は1年1試合のペースで実戦をこなしてきた。それでも「コンディションは全く問題ない。マイナスになるようなことは考えてもしょうがない。壊れるときは壊れるなって」と、あっけらかん。どこまでも前向きだ。
今回のGPでは、同級暫定王者のベルトも優勝賞金100万ドル(1億2500万円)も、手にすることはできなかった。だが、これまで幾度となく逆境を乗り越えてきた堀口だ。こんなところで足踏みしている暇はないと、そう言うだろう。「日本人史上最強ファイター」は、既に次を見据えている。【勝部晃多】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける」)


