幕下格行司の木村悟志(37=高砂)は、今場所から装束の袖の下にリストバンドをつけて土俵に上がっている。
そのオレンジ色のリストバンドには、「29」が縫い付けられている。これは、4月のプロ野球で球審を務めた際に頭部を負傷した川上拓斗審判員(30)の回復を願って作られたものだ。社会人野球のJABA県野球連盟審判部が作成。希望者に有料で譲り、収益を見舞金として家族に渡す取り組みが広まっている。
1つ1500円。2つを購入し、身につけている悟志は「何かできることがないかなと考えました。あの件でルールが変わり、球審はヘルメットをかぶるようになりました。土俵に上がっていて、いつケガをするか分からない状況は僕らも一緒ですから」と話した。リストバンドは行司にとって、装束への汗染み防止の効果もある。
悟志は入門するまで、アマチュア野球の審判員だった。高校時代は、出身地の山口・宇部野球連盟に審判として登録。当時の袖番号が、偶然にも川上審判員と同じ「29」だった。プロの審判員も目指していたが、行司の定員に空きが出たことがきっかけで高校を中退して大相撲の道を選んだ。
野球の審判も、大相撲の行司も、いなくては競技が成立しない。悟志は同志として静かに心を寄せている。【佐々木一郎】


