漢(おとこ)矢吹が偉業に挑む。

IBF世界ライトフライ級王者矢吹正道(32=LUSH緑)が、日本選手初めての試合に臨む。同級王座を保持したままで戦う1階級上の同フライ級王座戦に向けて28日、名古屋市内で前日計量に臨んだ。挑戦者として日本初の“2階級同時制覇”を狙う矢吹はリミット50・8キロ、王者アンヘル・アヤラ(24=メキシコ)は50・2キロでクリアした。日本選手で過去に例のない異例の試合を「おとこ気」で勝ち取る。

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いかつい。サングラスで表情を隠した矢吹だが殺気立つ空気は隠せなかった。「2階級制覇は後からついてくるもの。強いアヤラ選手に勝つことが今やるべきこと。とにかく明日が楽しみな感じですね」。穏やかな言葉は気迫にあふれた。

ライトフライ級王座のベルトを保持したまま、2階級制覇に挑む。以前は最大の難敵だった減量をあっさりとクリアした。「具合は違うけど、きついはきつい」と言いつつ「調整の仕方は一切変えていない。ライトフライよりは全然元気。リングに上がってみないと分からないが明日、どれだけ動けるか楽しみ」とワクワク感さえ口にした。

「前回もきつかったし、ライトフライではもう無理と思っていた」という。短期間に絶食、水抜きで一気に落としていた。かつては風呂場で立てなくなり、意識を失いかけたこともあった。「死ぬほど脱水せずにすんだ」という超絶な過酷さからは“卒業”できた。計量前日も栄養補助食品を口にできたほど。「ライトフライではもうやらない。ここからフライの体を作ってやりたい」と言った。

挑むのは24歳の若き無敗の王者だ。プロモートする亀田興毅氏(38)によると「スタミナがあって、手数が多い、典型的なメキシカン」。その相手を想定し、約140ラウンドのスパーリングで対策を積んできた。この日、初めて顔を合わせた印象を「すべてが想定内。いい選手だし、ちゃんとあいさつしてくれたいい人柄だけど、リングに上がったら別。明日はきっちり勝ちきりたい」。おとこの勝負に打ち勝ってみせる。【実藤健一】

◆世界ベルトを保持しての階級上への挑戦 日本選手では矢吹が初めて。プロモートする亀田興毅氏によると、矢吹が勝って2本のベルトを保持した場合、1週間以内に返上するタイトルをIBFへ申告する。スーパーバンタム級の世界4団体統一王者の井上尚弥陣営も、同級王座を保持したまま、フェザー級に挑む可能性を示唆している。

○…王者アヤラはリミットを600グラム下回る50・2キロで計量をクリアした。調整ミスは否定し「いつも500グラムぐらいアンダーする。よく簡単にオーバーする選手は多いが、自分は規律を持ってやっている」と言った。自身の愛称を「カメレオン」と明かし、「変幻自在に戦える。それが自分の長所だ」。世界戦2試合目のキャリアが不安材料だが「アステカの戦士として絶対に勝つ」と宣言した。