結びの一番で、まさかの「時間いっぱい」に困惑する珍事があった。

 鶴竜-碧山戦で3度目の仕切り後、時計係の田子ノ浦審判員(元前頭隆の鶴)が「時間いっぱい」を告げる右手を上げた。うなずく立行司の式守伊之助。だが、東西の呼び出しにはなぜか伝わっていなかった。立ち上がって両力士にタオルを手渡すことなく、審判員の手が上がるのを見ていた碧山は困惑。鶴竜も「時間かなと思ったらタオルがなかったので、待ったかと思った」と言う。

 まだ制限時間ではないのかと、半信半疑で土俵中央に向かった両力士。だが、式守伊之助が「待ったありません」と軍配を返したものだから、慌てて気持ちを切り替えた。1度目の立ち合いは呼吸が合わずに不成立。2度目で突っ張り合いとなった末に、鶴竜が引き落としで2敗を守った。

 勝った鶴竜は過去を振り返っても「あまりない」と苦笑いし「逆に変に力まず、そのまま行けたのかもしれないですね」と、気負いなく臨めたことで連敗をさけた。

 ただ、負けた碧山は呼び出しからタオルをもらおうとしていただけに、ぶぜんとした表情。田子ノ浦審判員は「時間だと思って手を上げたんですが、うまく伝わらなかった。呼び出しは悪くない」とかばった。