大関稀勢の里(30=田子ノ浦)の体だけが、土俵下に転がり落ちた。全勝で首位を走る大関豪栄道(30=境川)との直接対決。渡し込みで敗れて、3差をつけられた。1場所15日制が定着した49年夏場所以降、11日目を終えて3差から逆転優勝した例はない。優勝が条件の綱とりは大きく遠のき、絶望的となった。

 4連勝中だった相手に、朝稽古後には「集中してやること」とポイントを掲げていた。だが、熱くなったのか、果敢に張り手を繰り出す。次第に腰が高くなって上突っ張りになってしまい、両脇が甘くなったところでもろ差しを許した。支度部屋で言葉を発することはなかった。

 昇進を預かる審判部の二所ノ関部長(元大関若嶋津)は「厳しいね」とし、横綱審議委員会の守屋秀繁委員長は「優勝はないですね。序盤に2敗して、いつ3敗するのかなとずっと見ていたが、やっぱりなっちゃった。優勝して横綱に推挙したかった」と残念がった。

 ただ、来場所へ綱とりを継続させるためにも、残り4日間が重要になる。守屋委員長も「つなげられるかの期待もある」と奮起をうながした。