社会問題化した暴力事件に揺れる角界内部では、早くも不祥事の負の連鎖を懸念する声が相次いでいる。今年は21年ぶりの全90日間満員御礼を達成。大相撲人気の完全復活を印象付けただけに、反動が不安視される。

 大相撲に携わる人々にとって、“魔の5年間”の悪夢が今も残る。07年から11年にかけて、親方衆や横綱ら現役力士の不祥事が絶え間なく続いた。序ノ口力士の死亡事件に発展した暴力のほか、違法薬物、暴力団との関係や野球賭博、果ては土俵の根幹を揺るがす八百長問題へと至った。

 「今も忌まわしい記憶しかない。申し訳ない気持ちは一生残る」。不祥事に絡んだある親方は自戒を込める。日本相撲協会は深刻なイメージ低下で観客動員や巡業日数が激減。八百長問題で1場所中止となった11年の収支は48億8000万円の大赤字に見舞われた。

 積極的なファンサービスや情報発信など協会の地道な取り組みにより、ようやく信頼が回復。12年以降に協会役員を務めた親方は「暗黒の5年間を立て直すのに5年かかり、われわれは10年間も苦しんだ。今回の事件で不祥事がさらに連なれば、また向こう10年苦しむのか」と悲鳴を上げた。

 これまでと違うのは、税制面で優遇措置を受ける公益財団法人移行後という点だ。再発防止が求められる角界は今後も厳しい視線にさらされる。