大相撲の横綱稀勢の里(32=田子ノ浦)が5日、名古屋市の部屋で稽古後、名古屋場所(8日初日、ドルフィンズアリーナ)の休場を表明した。年6場所制となった1958年(昭33)以降の横綱では、貴乃花を抜いて単独最長の8場所連続休場となった。前日4日まで3日連続出稽古を行い、出場を目指したが、左大胸筋などのけがからの完全復活には遠く、断念した。

 初めて自らの口で休場を表明した。稀勢の里の8場所連続休場の内訳は、途中休場4度、初日からの休場は4度目。これまでは師匠の田子ノ浦親方(元前頭隆の鶴)が本人の思いを代弁していた。表明の日は稽古を休むのが定番。だがワースト記録更新となるこの日は稽古場に姿を現し、四股やすり足などを行った。その後、報道陣の前で「必死に稽古してきたけど調整がうまく進まず、まだ相撲が戻らないので、今場所は休場することにした。また来場所、すべてをかけて頑張っていきたい」と語った。

 前日4日、九重部屋への出稽古後に「物足りなさがあった」と決断した。出場すれば対戦する西前頭2枚目の千代の国と三番稽古で8勝3敗。だが前半は2勝3敗と苦戦した。その様子を見た解説者の舞の海氏は「もう少し時間があれば。早まってほしくない」と、復活のきざしが見えるからこそ休場を勧めていた。田子ノ浦親方は「僕から『厳しい』と話そうかと思ったけど、本人から(休場を)言ってきた」と、前日夕方に話し合ったと明かした。

 それでも表情に悲愴(ひそう)感はなかった。前日まで3日連続で出稽古し、横綱白鵬には2日に三番稽古、3日にぶつかり稽古で胸を借りて「目覚めた感じがする」と復調を予感。この日も「だいぶ(これまでと)違うものを名古屋でつかめた。感覚的にはもう少しという感じ」と手応えを口にした。

 入門から、故人の先代鳴戸親方(元横綱隆の里)の猛稽古で強くなってきた。復活への道は誰よりも分かっている。「(名古屋)場所中もしっかりと稽古したい。もっともっと自分に厳しくしていきたい」。本場所を休場するだけに、その先には言及できない。だが夏巡業でも鍛え、9月秋場所で1年半ぶりの復活を見据えている。【高田文太】