新横綱大の里(25=二所ノ関)が“九死に一生”の薄氷の白星で、優勝争いに残った。2敗でトップに並んでいた西前頭8枚目の一山本を、同体取り直しの末に押し出し。最初の一番は悪癖の引きが出て押し込まれ、行司軍配は相手に上がった。際どい勝負だったが“もう一丁”と決まり、場内は大盛り上がり。午後6時までのNHK総合のテレビ中継も、1分間延長する珍しい現象続きの中で3敗を守り、新横綱&3場所連続優勝の望みをつないだ。
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場内では、同体取り直しを期待する手拍子が起きていた。最初の一番。大の里は立ち合いで押し込めないと見るや、土俵中央から頭を押さえつけて引いた。だが一山本は落ちず、そのまま押し込まれた。大の里が土俵を割るのと、一山本が前に落ちるのがほぼ同時。映像では、わずかに一山本の右膝がつくのが早く見えた。だが立行司の木村庄之助の軍配は一山本。大の里は「(勝った感覚は)全くなかった」と振り返った。
直後に物言いがつき、協議は長引いた。場内の期待に応えるように「同体取り直し」がアナウンスされると、割れんばかりの歓声が起きた。午後6時に始まった取り直しの一番は5秒7で決着。負ければ昭和以降の新横綱として、単独ワーストとなる4個目の金星配給。不名誉な記録を残すとともに、新会場IGアリーナでの初代優勝力士の名誉も、絶望的となる4敗目を喫していた。薄氷の白星に「残り3日間、集中して頑張ります」と繰り返した。
実は最初の一番を終えた時点で、大の里が勝つ可能性は「0%」だった。幕内後半戦の審判長を務めた高田川審判部長(元関脇安芸乃島)が明かした。「一山本の勝ちか、取り直しかの協議。攻めていた流れからいったら一山本。大の里の勝ちはない」。ビデオ室の親方に確認しても「どちらともいえない」との回答だったという。攻めていたことを評価する見方も、ほぼ同時という見方もできるとの判断。最後は高田川部長が「恨みっこなしで」と、取り直しと決めた。物言いがつかなくても、大の里は負け。九死に一生を得た。
自力優勝の可能性はないが、取組前に4人いた2敗のうち、1人は自力で引きずり降ろした。13日目は再び2敗の琴勝峰戦。取り直しの一番は、相手の背後を取ってから一直線という文句なしの白星。幻の4敗目から抜けだした後は「しっかり集中していた」と、本来の姿を取り戻した。大の里の優勝を後押しするような、奇跡的な優勝戦線復活劇だった。【高田文太】

