カリフォルニア州の複数か所で先週から発生している山火事は、強風の影響を受けて被害を拡大させており、ロサンゼルス郊外のハリウッドセレブも多く暮らす海沿いの高級住宅地マリブや内陸のカラバサスにも大きな被害をもたらしています。マリブでは2人が死亡し、現時点で約400の家屋が焼失。歌手レディー・ガガやタレントのキム・カーダシアンと歌手カニエ・ウエスト夫妻、俳優マーティン・シーン、ギレルモ・デル・トロ監督ら多くのセレブを含む25万人が避難を余儀なくされ、11日には俳優ジェラルド・バトラーや歌手ロビン・シック、女優カミール・グラマー、「ドクター・ストレンジ」(16年)で知られるスコット・デリクソン監督らの自宅が全焼したことが明らかになっています。さらに12日には歌手マイリー・サイラスも、婚約者の俳優リアム・ヘムズワースと暮らすマリブの自宅が焼失したものの家族とペットは全員無事に避難していることをSNSで明かしています。

そんな中、100年近くに渡ってハリウッドの様々な映画やテレビドラマの撮影が行われてきた野外スタジオ「パラマウント・ランチ」も全焼したことが明らかになりました。2700エーカー(1092ヘクタール)もの広さを誇るパラマウント・ランチは、1920年代に西部劇映画の撮影のために作られた野外セットで、1927年にパラマウント・ピクチャーズが貸し出しを始めて以来何度かオーナーが変わりながらも、サンドラ・ブロック主演の「イルマーレ」(06年)、クリント・イーストウッド監督の「アメリカン・スナイパー」(14年)、ウォーレン・ベイティがアカデミー賞監督賞を受賞した「レッズ」(81年)やモンスターアクション映画「ヴァン・ヘルシング」(04年)など多くの映画のロケが行われてきました。また、イーグルスのアルバム「デスペラード」(73年)のジャケット写真や2016年から放送している大ヒットドラマ「ウエストワールド」のロケ地としても有名で、歴史的なセットを失ったことにハリウッドは大きなショックを受けています。

古き良き西部の時代にタイムトリップしたような雰囲気の家屋や教会、湖などもあるパラマウント・ランチは現在、国立公園局が管理しており、一般に無料で開放されていました。敷地内にある複数のトレイルをハイキングしたり、馬をレンタルして乗馬をしながらまるで本物のウエスタンタウンを散策しているような気分になれるので、知る人ぞ知る隠れた観光名所として親しまれていただけに地元の人たちにとっても悲しい出来事となりました。現在は「ウエストワールド」の撮影は行われておらず、ドラマの撮影には直接的な被害は出ていないと米メディアは伝えていますが、周囲は現在も避難勧告が出ているため、現時点で建物にどれほどの損害が出ているのかは把握できていないとドラマを放送するHBOはコメントしています。主人公ドロレスを演じるエヴァン・レイチェル・ウッドが、「ぞっとする。歴史が失われ、とても悲しい。教会がまだ立っているのに驚いている」とツイッターに投稿するなど、関係者やファンの間にもショックが広がっています。

マリブ周辺には他にもレオナルド・ディカプリオやブラッド・ピット、シャーリーズ・セロン、トム・ハンクス、オーランド・ブルーム、ブリトニー・スピアーズら多くのスターたちの自宅があり、鎮火までにはまだ数日以上はかかる見通しだと伝えられる中、さらなる被害拡大が心配されています。

【千歳香奈子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「ハリウッド直送便」)