7月18日から脳腫瘍で入院・治療していた三遊亭円楽(69)が19日に退院し、病院から楽屋入りした東京・国立演芸場8月中席(11~20日)のトリも完走した。

復帰した高座で、円楽は国立演芸場との因縁に触れた。師匠の5代目三遊亭円楽さんは07年2月に国立演芸場で行われた「国立名人会」で自らの進退をかけて、得意の「芝浜」を演じた。しかし、その出来に納得がいかず、高座後の会見で「現役引退」を表明した。09年に亡くなったが、国立演芸場が最後の高座になった。桂歌丸さんも18年4月19日の国立演芸場中席のトリで「小間物屋政談」を演じた後、肺炎が悪化し、入院した。3カ月後の7月には亡くなり、この高座が最後となった。

国立演芸場8月中席のトリは歌丸さんが長年務めていたが、今年から円楽が引き継ぐことが決まっていた。だから、7月18日から入院していた円楽には「休演」するつもりは微塵もなかった。「ここを目標にやってきた。うちの師匠(5代目円楽)が引退したのも、歌丸師匠の最後の高座もここだった」と振り返りながら。「でもまだ(歌丸さんに)ついていきません。私は戻ってきた」と、会場の笑いを誘った。

円楽にとって、歌丸さんは特別な存在だった。レギュラー出演した「笑点」では毒舌合戦を繰り広げたけれど、仲がいいからこそ、気兼ねなく毒舌をはけた。昨年の肺がんに続く、今回の脳腫瘍での入院にも、「「きっと(歌丸さんが)教えてくれたんじゃない? 『まだこっちに来ちゃいけねえよ』って。(天国に)呼ぼうとしたんだったら、ただじゃおかねえぞ」と、毒舌も復活した。

昨年、歌丸さんが亡くなった時、円楽は「本当の父親、育ての親の先代。守ってくれた最後の父親との別れです」とコメントしていた。そして、亡くなって、最初の「笑点」の放送では最後に円楽は涙目で歌丸さんへの思いを口にした。「ジジィ!早すぎるんだよ!」。そのひと言に司会の春風亭昇太が「座布団、1枚」と応じた。尊敬する先輩落語家に「ジジィ」と自然に言える、そういう関係だった。【林尚之】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「舞台雑話」)