落語界では「オンライン落語会」がブームになっている。4月から寄席の興行が中止となり、各地の落語会も3月から相次いで中止となっており、落語家には噺をやる場がなくなっていた。そこで、若手からベテランまでが、オンラインでのライブ配信に挑み、人気を呼んでいる。

5月2、3日の「文春落語オンライン」に柳家喬太郎が登場。チケット料金は1100円で、当初予定した500席は完売。両日ともに500席を追加販売したところ、それも即日で完売した。

春風亭一之輔は鈴本演芸場で本来トリをとる予定だった4月21日から30日までYouTubeチャンネルで「オンライン落語会」を生配信したところ、動画再生数は20万回を突破したという。鈴本演芸場の定員は約300人だから、単純計算でその700倍の人が見たことになる。

一之輔は5月下席の浅草演芸ホールでもトリの予定だったが、再び21日から30日まで10日連続で生配信を行っている。国内だけでなく、海外から見ている人もおり、生の落語を求めるファンをしっかりつなぎ留めている。当初は無料だったが、「金を払いたい」との声に応じて、投げ銭機能も設定し、それなりの収益も得ている。

そのほか、柳家花緑が23日から自宅で親子で落語を楽しめる「おうちで親子寄席」の無料ライブ配信を行い、仙台にある唯一の寄席「花座」も休業中だが、落語などのオンライン配信を始めている。落語協会、落語芸術協会ともに、その公式サイトで協会員の動画配信の状況が分かる一覧リストを掲載しており、それを参考にするのもいいだろう。

緊急事態宣言の解除も間近で、6月1日からは寄席も再開される見通しだが、「3密」を避けるガイドラインもあり、従来のような環境下で落語を楽しめるかは不透明だ。今回のコロナ禍で広まった「オンライン落語会」も、落語の新たな楽しみ方の1つとして定着していくかもしれない。【林尚之】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「舞台雑話」)