いい映画を見た。そう純粋に思えた。どちらかと言えば、あまり物覚えはいいほうではないが、エンドロールを見ていると、劇中のせりふや情景がじんわりとよみがえってきた。「隠れている方が危険で怖い」。草原の風、荒れた大地、川のせせらぎ…。すべてがつながっていた。
1980年代、韓国から米国に移住してきた家族の物語。一家4人は南部のアーカンソー州に広大な土地を購入する。住まいはトレーラーハウス。韓国野菜を育て一獲千金を狙うが、さまざまな困難が降りかかる。そんな中、韓国から祖母が心臓病の長男の世話をするため渡米する。ある日、祖母と長男は敷地の近くを流れる川のほとりにたどり着き、祖母は故国から持ってきたミナリ(セリ)の種をまく。
ミナリは韓国語で、多年草のセリを指す。たくましく地に根を張り、2度目の旬が最もおいしいことから、子供世代の幸せのために、親の世代が懸命に生きるという意味が込められているという。どんな逆境にもくじけず、根を張ろうとする家族の姿に勇気づけられた。アカデミー賞有力候補と言われているのもうなずける。【松浦隆司】
(このコラムの更新は毎週日曜日です)




