子供の頃、親や周囲の大人から複雑な何かを感じ、触れない方が良いかも? と黙ってやり過ごしたり、のみ込んだ経験、あるのではないだろうか? 見終わった後、恐らくは言葉にし難い感情と、それに伴う記憶が胸の奥によみがえってくるであろう1本だ。

11歳の沖田フキを取り巻く大人は複雑だ。父は入退院を繰り返し、多忙でいつも不機嫌な母は、仕事の研修で知り合った男性と不倫関係に…。フキは見舞客が父の置かれた状況をコソコソ話すのを聞き、母の不倫相手と対面などする中で、割り切れない大人の世界を垣間見る。夏休みに入り、独りきりで過ごすうちに伝言ダイヤルのメッセージを聞くことに興味を抱き、自分でも吹き込み、自称男子大学生に誘われてしまう。

主演の12歳・鈴木唯は、マイペースで想像力豊かなフキを役の年齢と同じ11歳で演じた。年相応に無邪気に輝いた次の瞬間には、定点監視する防犯カメラのように無機質になったり、大人の心を見透かすように痛切だったり…変化する瞳の色だけで、スクリーンを染める。早川千絵監督も「子役で映画を作る経験は初めてだったが、私の演出など必要ないくらい自然に素晴らしい演技をやってしまう。監督として楽してしまった」と振り返った。

俳優を始めて、たった2年で世界最高峰のカンヌ映画祭が選ぶ「注目すべき10人の才能」に名を連ねた。「この先も、どんどん俳優を頑張っていきたい」と語る鈴木への周囲の期待が過熱気味なのも、致し方ないのかも知れないが…だからこそ、映画記者として、大人として静かに見守っていきたい思いでいっぱいだ。【村上幸将】

(このコラムの更新は毎週日曜日です)