第2次世界大戦末期に激戦地となった沖縄・伊江島で、終戦を知らないまま2年間、大木の上で身を潜めていた日本兵2人がいた。そんな信じがたい実話を聞いた作家の故井上ひさしさんが原案を作った同名舞台の映画化だ。
日本本土から派遣された軍国主義に染まった厳しい山下少尉を堤真一、現地召集された伊江島育ちの新兵の安慶名を山田裕貴が演じた。米軍に追い詰められ、ガジュマルの木の上で援軍が来ると信じつつも、いつ米軍に見つかるかもしれない恐怖が画面越しに伝わってくる。
月日とともに飢えで目はくぼみ、極限状態の2人の鬼気迫る表情がすさまじい。根っからの軍人の山下少尉だが、堤が演じると、力強さの中に、人間らしいおかしみが垣間見える。
飢えをしのぐ手だてを見つけても、飢えは続く。家族に会えず、いつまで続くのか分からない果てしない時間…。食べるものがないということだけが「飢え」ではないことに気づかされた。生命力が強いといわれるガジュマルの木のたたずまいも神秘的だ。終戦からまもなく80年。悲惨さだけではなく、巧みに笑いも交えて観客に問いかける、この夏の作品だ。【松浦隆司】
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