高級クラブやバーが集まる大阪・北新地。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う政府の緊急事態宣言が出され、初の金曜日となった10日夜、大阪・キタの街を歩いてみました。いつもなら歩道に人があふれるほどですが、人影はまばら。臨時休業の張り紙の店が目立ち、この日を機に店を畳む女性経営者もいました。「夜の街」では臨時休業ではなく、閉店を選択する経営者が増えています。

メインストリートの「新地本通り」。黒服と呼ばれる男性スタッフは「人通りは100分の1」とつぶやきました。

閑散とする街の様子を見ていたラウンジを経営する男性(30)は、生き残るために融資や国の支援の活用など調べましたが、条件を満たせなかったといいます。「女の子には通常通り、出勤してもらっている。プールしてある資金から給料を払っているが、この状態があと2カ月続けばアウト」。この日、同じビルに入るバーを経営する女性から男性に「店を閉める」とあいさつがあったといいます。

大人の夜の社交場と言われる北新地は1年で約400店が撤退するといわれる厳しい世界です。ただこのコロナ禍により、30店舗以上が閉店したという情報もあります。

これまでバブル崩壊やリーマン・ショックなど北新地が大きな打撃を受けたこともありました。北新地社交料飲協会の副理事長の織田高央さんは言います。「リーマン・ショックのときは、大きな会社のお客さんが少なくなりましたが、中小企業の経営者の方が通ってくれた。リーマン・ショックのときでもお客さんが途切れることはなかった」。30年以上のバーテンダー歴がある織田さんですが「北新地に人がいない…。こんな状況はだれも経験したことがない」と話します。 大阪府に続き、関西広域連合も深夜営業の店などへの入店自粛を強く呼びかけました。臨時休業を選んだオーナーママの女性(41)は「もう個人の力では手の打ちようがない。休業しても家賃を払い続けなければいけない。次の選択を考えなければいけない」。

【松浦隆司】(ニッカンスポーツ・コム/コラム「ナニワのベテラン走る~ミナミヘキタヘ」)