坂道シリーズの連載「坂道の火曜日」、今週は5月9日から3日間、東京・日本武道館で行われた欅坂46の3周年アニバーサリーライブについて、担当記者のコラムです。1度だけのMCを挟んでほぼノンストップの構成。全体曲のみを披露する異例のセットリストで、ファン1万人を魅了しました。欅坂46の世界観が凝縮された「一気見せ」ライブの“真実”とは。

迫力あるパフォーマンスをする欅坂46のメンバー
迫力あるパフォーマンスをする欅坂46のメンバー

ライブは“アンコール”から始まった。4月に行われた大阪公演のラストで披露した「危なっかしい計画」を1曲目から歌い、「以上、欅坂46でした!」とあいさつして退場した。大阪公演から東京公演はストーリーが続いている、と見るものを意識させる演出。ファン1万人はいきなり「欅坂46!」とアンコールを行った。そこからは、まるで「夢」を見ているかのような、あっという間に駆け抜ける1時間半だった。

2曲目の「避雷針」からはダークな世界観のナンバーが続き、MCを挟んで、平手友梨奈(17)らメンバー8人が本格的な影絵パフォーマンスを披露。その後は「もう森へ帰ろうか?」など切ない雰囲気の曲から、徐々にアップテンポなナンバーへと続き、「アンビバレント」で本編を締めた。

平手友梨奈(中央)を中心にしたステージでパフォーマンス
平手友梨奈(中央)を中心にしたステージでパフォーマンス

さらに千秋楽のみ、アンコールで「黒い羊」を披露。メンバーたちが赤い花束を持つ平手を、突き飛ばしたり、抱きしめたりした。ステージに1人だけ残った小林由依(19)が、平手が祭壇に置いていった花束を手にとり退場すると、大きな拍手があがった。芸術作品のようなライブだった。

アンコール含めて17曲、ほぼノンストップの構成。平手はじめ、メンバーたちは全精力を出し尽くした。特に「黒い羊」は曲の世界に入り込んだメンバーの心身に大きな負担がかかる楽曲で、魔曲と呼ばれることもある。今後も披露する機会は限られそうなだけに、この日は貴重なパフォーマンスとなった。

2期生の活躍も目立った。「大人は信じてくれない」の冒頭で平手の隣に立った藤吉夏鈴(17)は、独特のムードを持つ。武元唯衣(17)山崎天(13)らは感情のこもったパフォーマンスで魅了した。特に大きな歓声を浴びた森田ひかる(17)は、人気の高さをうかがわせた。

数人でパフォーマンスするユニット曲がなく、メンバー20人前後で披露する全体曲ばかりだったのは、世界観の「ブレ」を少なくするためだったのだろう。もちろんユニット曲にも多くの名曲があるが、今回のコンセプトはデビュー3周年で醸成してきた欅坂46の世界観を凝縮し、怒濤(どとう)のように届ける「一気見せ」のライブだった。【横山慧】