日曜日のヒーロー&ヒロイン

夏帆 どんな役も演じたいからいろんなこと知りたい

女優夏帆(28)が映画「Red」(三島有紀子監督、21日公開)で大人の恋愛物語に挑戦した。女優デビューから16年。少女のようなあどけなさと、大人びた表情が混在する。柔軟な演技力が魅力だが、原動力は満足することのない向上心だという。

映画「Red」で大人の愛の形に挑戦した夏帆はアンニュイな雰囲気を漂わせる(撮影・浅見桂子)
映画「Red」で大人の愛の形に挑戦した夏帆はアンニュイな雰囲気を漂わせる(撮影・浅見桂子)

★大人の恋愛挑戦

夫と子供のいる女性が、10年をへて元恋人と再会し、心を寄せ合う物語。冒頭の雪のシーン、苦悩の表情に引きつけられる。どちらかといえば、明るい役や少女性のある役のイメージがあったが、本格的な恋愛作品は初めてだ。三島監督の映画「ビブリア古書堂の事件手帖」(18年)に出演した経緯があり、オファーを受けた。

「三島監督に、主演で、しかも男と女の話で、と言っていただいたので驚きました。自分でいいのかというのもありましたが、とてもうれしかったです。三島監督の覚悟を感じたので、私もそれに応えたいと思いました」

一見恵まれている主人公の塔子。経済的にも十分な環境で、優しい(と見える)夫、かわいい娘もいる。元恋人にひかれる状況としては、共感を得にくいかもしれない。

「最初に思ったのはこれ難しいな、と。塔子という役は、演じ方によっては全然違う見え方になってしまう。果たして私はこの役を演じきれるのかと思いました」

最初の直感通り、難しい役だった。経験で培ってきたアプローチができなかったという。

「手探りで演じていて、役をなかなかつかめませんでした。いつもは『この役はこんな感じだろう』と感覚的につかめる瞬間があるのですが、それがなくてすごく苦しかったです。全体的に難しいシーンが多くて毎日がヤマ場。カロリーを使うシーンが多くて。毎日悩みながらやってました」

演じ切れたのは、三島監督や共演の妻夫木聡をはじめ、スタッフ、共演者のおかげだった。

「皆さんに助けられた、ということしかないです。現場では、私が悩める環境をつくってくださったんです。とことん役と向き合う時間をつくってくれました。ありがたかったです。妻夫木さんがすごく見守ってくださる感じがして、自分がどんな状況であっても全て受け止めてお芝居で返してくださる。甘えさせていただいて、胸を借りるつもりでやってました」

舞台あいさつでは、妻夫木に「悩んでいることが顔に出ちゃう。うそがつけない人」と褒めてもらったが、本人は苦笑いだった。撮影時の苦しさを垣間見た。

★休みも翌日考え

妻夫木とは濃密なラブシーンもある。

「正直、ほかのシーンと変わらないです。特別ラブシーンだからどうとか、特別な心持ちでというのではないです。お話をいただいた時に、そういうシーンがあると分かっていてこの役を引き受けているので。ただ複雑なシーンではあったので、とても感情的にならなくてはならず。そういう意味では難しいシーンではありました」

撮影は1カ月半。昨今10日間、2週間で撮影という作品も珍しくないが、今回はじっくり向き合えた。

「作品のことだけをずっと考えていられました。振り返ると、苦しいこともあったんですが、すごく充実した時間でした。ずっと作品の世界観にどっぷりいました。単純に休みがなくて、プライベートの時間が一切なかったんです(笑い)。家に帰っても、次の日のシーンのことを考えて寝て、起きて現場に行って…の繰り返しでしたね。1日だけあった休みの日も、翌日からの撮影のことを考えていました。私も器用なタイプではないので幸せだったなと思います」

★一番の原動力は

「天然コケッコー」「うた魂♪」など、デビューして間もないころは、のびのびした少女役が印象的だ。ポップな作品や、エンターテインメント作品でも活躍。「海街diary」で演じた4姉妹の3女役は、作品のいやしでもあった。芸能界入りには積極的だったわけではなかったが、多くの監督に請われる女優になった。

「できない、ということが一番の原動力かもしれないです。何年やってもできないというか。自分が納得いく芝居ができたかというと、まだ1度もないです。一生そうなのかもしれないですけど、なかなか手を伸ばしても届かないです。そういうところが原動力の1つなのかな。自己採点厳しめ? そんなことないです普通だと思います」

手を伸ばしたいところ、の具体像はあるのだろうか。

「パッと言葉にすることはできないですね。でも、試写で初めて作品を見たときに毎回ものすごく落ち込みます。なんでこんなにできないんだろうなあ…、一体いつになったらできるようになるんだろうっ…て思いながら16年続けてきました」

★人目気にせず…

何よりも現場が好きだという。

「たまたま、表に出る=お芝居をする、という仕事をしていますけど、みんなで1つの方向に向かって1つの作品を作り上げる…その過程がすごく好きです。そこに参加できる喜びを感じます」

現場にいることを大事にしたいからこそ、今後演じてみたい役は、という問いへの答えも一貫している。

「いただけるのであればどんな役もしたいです。今後、明確にこうなっていたいというよりは、役に出会った時にちゃんと自分の力を出せるようにしていたい。10年後、20年後を見て仕事をするのも大事かもしれないですけど、役も出会いですから」

前回の「日曜日のヒロイン」登場は12年前。「早く結婚したい」と言っている。

「子供だなー、まだ(笑い)。結婚願望はありますが、いつまでに結婚したいとかいうことはないです。当時16歳とかだったと思うんですけど、28歳ってもっと大人だと思ってました。いざ28歳になってみると思ったより全然大人じゃない。昔に比べるとより現実的になったんでしょうね。30代に入ってもきっと同じようなことを言ってるのかもしれない」

もっともっと、いろいろ、という言葉を使って、インプットを大事にしたい気持ちを語った。

「今は自分の時間を自分のためだけに使いたい。もっともっと知りたいこともありますし、いろいろ勉強したいです。仕事だけにかかわらず、もう少し身軽でいたいなと思います。今はフットワーク軽く、いろんな所に行ってみたい。海外も国内も。ヨーロッパを回ってみたいですし、国内も行ったことのない所がたくさんあります。行ってみたい国がたくさんあります。稽古場でお芝居をする中で何かを得るのも大切かもしれないけど、現場を離れたところで人としていろんなことを知りたい。最近気付いたんですけどすごいフットワーク軽いんです、私」

肩の力が抜け、楽になってきた。

「昔に比べて人との関わり方も変わりました。昔は何でもかんでも1人で抱えていました。最近は人目を気にしなくなったんですかね。信頼できる友人と出会ったり、変わってきたんでしょうね」

いろんな思いやチャレンジがスクリーンに確実に表れている。【小林千穂】

▼「Red」の三島有紀子監督(50)

いろんなものをはがしていくと何が残るのか。深部をのぞいてみたい女優だ。現場では、主人公の塔子の“愛に生きた季節”を体感するように、苦しみもがき光りをたどるように作品に向き合ってくれた。はかなさ、エロス、頑固さ、もろさ、慈愛、覚悟、すべての感情が、ビー玉のように美しい球体の目に力強く宿る。

◆夏帆(かほ)

1991年(平3)6月30日、東京都生まれ。ティーン誌向けファッション誌でモデルを務め、04年日本テレビ系「彼女が死んじゃった。」で女優デビュー。07年「天然コケッコー」では日本アカデミー賞新人俳優賞など受賞。映画はほかに「箱入り息子の恋」「ピンクとグレー」「きばいやんせ! 私」「ブルーアワーにぶっ飛ばす」など。今年は「劇場版 架空OL日記」「喜劇 愛妻物語」の公開が控える。

◆Red

直木賞作家、島本理生氏の小説が原作。夫と子供に恵まれ、誰もがうらやむ生活を送る塔子(夏帆)が、10年ぶりにかつて愛した鞍田(妻夫木)に再会する-。ほかに柄本佑、間宮祥太朗らが出演。

(2020年2月16日本紙掲載)

 
 
 
 

おすすめ情報PR

芸能ニュースランキング