日曜劇場。今期はゲーム業界が舞台の「アトムの童」が放映中。

天才ゲームクリエイター役に山崎賢人、その相棒に松下洸平と旬な俳優2人が出演。オリジナルストーリーだが、日曜劇場の定番となった池井戸作品をどこか感じ、巨大企業に老舗玩具メーカー・アトム玩具が挑む構図となっている。

とにかく毎週熱い、夢や希望にまい進していた若い時分を思い出す人も多いであろう。余談だが、会社員だったころ「半沢直樹」に感化された若手社員から、放送直後に仕事に対する熱いメールを送られてきて多少面倒だったことがある(笑い)。

そこで今回紹介したいのは「アトムの童」でヒロインを務める岸井ゆきの。神奈川県出身で現在30歳(見えない!)、10代からドラマに出演し、2017年の映画「おじいちゃん、死んじゃったって。」で初主演を務め、ヨコハマ映画祭最優秀新人賞を獲得した。

その後、朝ドラ「まんぷく」で26歳にして14歳の役を演じ話題になる。さらには2020年に映画「愛がなんだ」で日本アカデミー賞新人俳優賞を獲得。はじめて認識したのは、ドラマ「99.9-刑事専門弁護士-」で、松本潤演じる深山に片思いをするシンガー・ソングライター役であっただろうか。

弁護士ものでシリアスな場面も続く中、小料理屋でどこか空回りする演技が印象的であった。そしてその時、直観でくるなと思った。どちらかと地味な印象の彼女、個性的な雰囲気はあるが、演技自体もオーバーなものでは決してない。しかしどこかひきつけられるものがあったのを今でも覚えている。

魅力のひとつとしては、演じる役が彼女にとって等身大(=素の本人に近い役)に見えること。前述した「愛がなんだ」では一目ぼれした男を愛しすぎる恋愛依存の主人公を務めた。途中から本人にしか見えない時があり、ドラマが終わるころにはあの子あの後どうなったんだろう?と勝手に想像してしまった。

当たり役といえばそうだが、その幅が広く、そしてその回数も多い。なんとなくキャリアを重ねるのではなく、必然と重ねてきたのではないかとさえ思う。そして「アトムの童」では2人のイケメンに囲まれるが、恋愛要素はなく2人を見守る母親のような役割、その感じもまたいい。恋愛依存の役をやったかと思いきや、イケメン2人に囲まれても動じない役、両極端な役だがどちらもぴったりである。

さらには、今月16日から公開される映画「ケイコ 目を澄ませて」(三宅唱監督)では、耳が聞こえないプロボクサーを演じる。予告編を観るかぎり、これもまたはまり役にみえる。実力派監督のもと、どのような等身大をまた魅せてくれるのだろうか。ドラマに映画にと今後も楽しみな女優さんである。

◆谷健二(たに・けんじ)1976年(昭51)、京都府出身。大学でデザインを専攻後、映画の世界を夢見て上京。多数の自主映画に携わる。その後、広告代理店に勤め、約9年間自動車会社のウェブマーケティングを担当。14年に映画「リュウセイ」の監督を機にフリーとなる。映画以外にもCMやドラマ、舞台演出に映画本の出版など多岐にわたって活動中。また、カレー好きが高じて青山でカレー&バーも経営している。最新作「追想ジャーニー」が11月11日から池袋シネマ・ロサ他にて公開。

(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「映画監督・谷健二の俳優研究所」)