ゆっくり歩けば、景色がよく見える。香里奈(31)が30代に入り、仕事のペースを以前よりスローにしている。多忙だった20代に後悔はないが、インプットする時間を増やしたかった。4年ぶりの主演ドラマとなるTBS系「結婚式の前日に」(火曜午後10時)に出演中。スピードを緩めたからこそ見えてきたものが演技に生かされている。
休日になると、自転車で出掛ける。買い物に行くにもバスや電車を利用する。「家の周りにどんな木が生え、どんな花が咲いているのか、最近まで知らなかった。仕事の時は特に、慌ただしく車に乗り込んで出掛け、帰ってくるのは夜遅くでしたから、気付かなかった。ゆっくり動けば、周りが本当によく見える。発見が多いです」。
乗客の日常会話や街を行き交う人の言葉も新鮮という。「話し掛けられたり、道を聞かれたり、そういうことが、ごく自然にある。普通のことのはずなのに以前はなかった。大切なことだと感じています」。
20代は慌ただしかった。ファッション誌の専属モデルを務め、女優としてドラマ、映画の仕事が隙間なく待っていた。2日続けて休むことはなかった。不満はなかったが焦りはあった。「自分の中にあるものを出すだけで、吸収する時間がなかった。いつの間にか1年が終わり、また次の年が始まる。30代になったら、ペースも内容も少し変えていきたいと思っていました」。スタッフと話し合い、仕事を以前よりもスローペースにすると決めた。
「結婚式の前日に」は、30代に入って初めてのドラマ。挙式100日前に脳腫瘍と診断されたヒロインを演じている。婚約者や突然姿を見せた母、男手一つで自分を育てた父との関係も描くホームドラマ。「今までの出演作と違う印象を持っていただければうれしいです」。設定は特殊だが、等身大の女性を力まず演じている。「リアリティーあるキャラクターにしたい。自然な話し言葉や表情を意識しています」。実生活の経験を生かしている。
生死をめぐるドラマと、このタイミングで出合ったことに縁も感じている。一昨年末、祖母が亡くなった。入院中は2人の姉と母でスケジュール調整して見舞いに行った。「家族で助け合う大切さをあらためて感じました」。18歳で上京後、連絡をあまり取り合ってこなかった母と、最近はLINEなどを使って以前よりコミュニケーションを取るようになった。「20代のころは、うるさいと思うこともありましたが、今は少しだけ素直に聞けるようになりました。言葉で励まし合うことはありませんが、母の気持ちは分かっているつもりです。そういう時にこういう作品に巡り合えたことに感謝しています」。【上田悠太、松田秀彦】
◆香里奈(かりな)1984年(昭59)2月21日、名古屋市生まれ。00年ファッション誌「Ray」専属モデルで本格デビュー。01年フジテレビ系「カバチタレ!」で女優デビュー。08年TBS系「だいすき!!」で連続ドラマ初主演。ドラマ主演は「リアル・クローズ」「美咲ナンバーワン!」「私が恋愛できない理由」など。04年「深呼吸の必要」で映画デビュー。現在は月刊誌「GINGER」レギュラーモデル。165センチ。血液型A。



