新人賞らしい初々しさだった。浜辺美波(17)の背筋は終始、ピンと伸びっぱなしだった。背もたれから体を離し、地蔵のように動かない。それもそのはず。同じテーブルには北野武監督、役所広司、尾野真千子と、日本映画界を代表する名監督、名優がいた。「予想以上に会場も広くて、選考会の映像が流れると、緊張が何倍にもなっちゃいました」。食事にも手が出ない。「のどを通らなかったです。甘いものもあって、食べたかったんですけど…」と苦笑いした。

 そんな緊張も、ステージに立つと吹っ飛んだ。「マネジャーさんに『だまされたと思ってついてこい』と言われて、今日ここに立てた。あの時、だまされて良かった」。芸能活動か学業かで迷っていた中学1年のころに言われた一言で、女優になる決心をした。「私の将来を背負うようなことを言ってくれる人はいなかった。重い言葉だけどうれしかった」。一見、ジョーク交じりのスピーチに、感謝の隠し味を添えた。

 「君の膵臓をたべたい」では、膵臓の病気で余命わずかな女子高校生を、みずみずしく演じた。「亜人」でも、主演佐藤健の妹で、入院中という役。「はかなさ」が似合う役で賞を手にした浜辺を、前年受賞者の有村架純(24)は「存在感があるけど、はかなげで、不思議な魅力がある」と表現。月川翔監督(35)は「序盤は不安を隠して振る舞っていたところから、もう1人の主人公と出会って、明るくなっていくという差をつけて演じてくれた」と、器用さを絶賛した。

 若さとまぶしさで突っ走ってきた女優人生の序章は、この新人賞でひと区切りにする。「これからは自分でも考えて提案しながら、いろんな作品に関わっていきたい。あと、マネジャーさんにも、まだだまされていきたいですね(笑い)」。【森本隆】