北野武監督(71=ビートたけし)が24日、TBS系「ニュースキャスター」(土曜午後10時)で目を潤ませながら、21日に急死した大杉漣さん(享年66)への思いを語った。2人の関係を紹介する映像を見終えた後、司会の安住紳一郎アナウンサー(44)に「寂しいですね」と言われ、小さな声で「うん」とうなずき、あふれる涙を拭った。

 訃報は21日午後、都内で番組収録後にマネジャーから知らされた。「頭がパニックになって、大杉漣って誰それって聞いた。頭で理解できなかった」。

 93年「ソナチネ」で初めて起用した。オーディションに遅れてきた大杉さんを数秒だけ見て決めた。「勘なんだけど、この人を使うべきだと思った」。撮影が始まると、ヤクザ役の大杉さんの演技に魅了された。「『全部アドリブでやって』とお願いしたら、自分でせりふを作っちゃって、それがうまくて延々やれるの」。すぐに死ぬ役だったが後半まで生き延びる設定に変更した。大杉さんは同作の好演もあって人気俳優の仲間入りを果たした。

 「HANA-BI」を始め10本の映画に起用した。「どんな役でもやってくれた」と感謝し、「いくら監督だと威張っていても、役者が支えてくれているものだとよく分かったけど、だけど早いよね」と悔しそうな顔をした。最後の映画出演も北野映画「アウトレイジ 最終章」となった。「申し訳ないけど死ぬ役なんだよね。すごい変な言い方だけど、俺が生かして俺が殺したみたいな妙な気になって。悲しいけど、申し訳ないなって思ってさ」と言って目を潤ませた。

 「父親、母親のように自分に近い人の死はこたえるけど、同じように、長い関係の相棒や、かたわれがいなくなる寂しさがある。縁あって自分の映画を支えてくれた人だから。でも(今ごろ)何してるんだろう…」。今も、別れを受け入れることができていない様子だった。