「万引き家族」で作品賞を受賞した是枝裕和監督(56)は、前回「あゝ、荒野」で同賞を受賞した岸善幸監督(54)から盾を手にすると、日刊スポーツ映画大賞が始まった31年前に、制作会社テレビマンユニオンで、ともに映画監督を目指し、アシスタントディレクター(AD)として奮闘した若き日々を感慨深げに語った。

是枝監督 31回目という数字を聞いて、ちょっとビックリしたんですけど。岸とは31年前に、テレビマンユニオンという制作会社に入り、つらいAD生活を過ごし、赤坂の編集室で悪口を言いながら「いつか映画を撮れたらいいな」と言っていた。こんな日が来て、2人で壇上で会える日が来るとは夢にも思わなくて…特別な日になっています。ありがとうございます。

岸監督も「本当に感慨深い。先輩の悪口を言っていたんで…まさか(一緒に壇上に)上がることが出来るとは。是枝さん、ありがとうございます。映画を見て、2人でいろいろ話していましたが、監督になるのは夢のようなこと。是枝さんについていって良かった」と笑みを浮かべた。

「万引き家族」は、治(リリー・フランキー)と信代(安藤サクラ)の夫婦、治と万引で生計を補う息子の祥太(城桧吏)、信代の妹亜紀(松岡茉優)が、年金目当てで治の母初枝(樹木希林)の家で暮らす、複雑な家族を描く。治と祥太が凍えていた少女(佐々木みゆ)を連れてきて以降、変化が生まれた家族の姿を通し、年金や児童虐待をはじめ、現代の日本社会が抱えるさまざまな社会問題を投げ掛けた。

作品は世界3大映画祭の1つ、カンヌ映画祭で、日本人監督として21年ぶりに最高賞のパルムドールに輝いた。そのことに話を向けられると、是枝監督は「家族の抱えている問題は、日本だけではない。多くの外国の方が、自分の隣にいても全くおかしくないと自分の問題と考えてくれた」と語った。

今回の受賞は、カトリーヌ・ドヌーブ、ジュリエット・ビノシュとフランスを代表する女優が出演する次作「La Verite」(19年公開)撮影中のパリで聞いた。「La Verite」について聞かれると「12月12日に無事にクランクアップしました」と語った。

花束プレゼンターとして登壇した、主演のリリー・フランキー(55)は「『万引き』と呼ばれる。僕も街の中で、おなちゃんに『万引きの人』とか『泥棒』と呼ばれる。こんなふうになるとは、失礼かもしれないけれど、思わなかった」と、あらためてパルムドール受賞効果に驚いた。